お茶

FOODEX2017 中国茶・台湾茶レポート(後編)

中編でも触れましたが、今年は台湾区製茶工業同業公会による恒例のセミナーがありませんでした。
代わりというわけではないのでしょうが、台湾のお茶ブランドのセレクトショップ・祥雲茶坊を運営しているショーン・フレアさん主催で「お茶のプロと共に高級台湾茶の本格的テイスティングを体験」という出展者セミナーが開催されました。

 

梨山烏龍茶4種を含む6種をテイスティング

このセミナーの講師を務めたのは、華剛茶業の五代目の杜蒼林氏。

脇を固めるメンバー陣も豪華で、テイスティングのお茶淹れの仕切りをしていたのは、台湾の講茶グループのCEOで、新世代のお茶教室を実施している講茶学院の湯家鴻氏。

そして、通訳には華泰茶荘の林聖泰氏と、それぞれ単独でも3時間ぐらいの講座は軽くこなしそうな面々が揃いました。

最初に梨山の概略を説明し、その後に6種類のお茶をテイスティングします。

今回用意されたのは、

  • 凍頂烏龍茶
  • 経典泉芳(発酵少し重め、中焙煎)
  • 龍韻梨山(発酵軽め、無焙煎)
  • 臻曦(発酵重め、中焙煎)
  • 東方美人
  • 冬陽(紅茶)

の6種類。
凍頂烏龍茶、東方美人を除くと全て梨山のお茶という豪華なラインナップでした。
しかも無料でアンケートに答えるとお土産付きの大盤振る舞い。
その甲斐もあってか、想定を越える48名の方が参加されました。

ただ、今回は会場の制約が非常に大きくありました。

まず、出展者セミナーは時間が40分と限られているため、十分に説明などができなかったこと。
会場が狭いところにテイスティングスペースを設けたため、かなり窮屈な中での試飲となってしまったこと。
さらに、ただでさえ時間が短いのに、前のセミナーが押して準備の時間が十分に取れず、お湯不足になって試飲をお待たせしたこと、など。

このあたりについては、講師の杜氏も反省しきりでした。
海外からの出展者の方は、どうしてもアウェーになるので、事前に会場を見たりもできません。
やむを得ない部分も多かったかと思います。

それにしても、これだけ豪華なメンバーが来日しているのがFOODEXです。
台湾茶をきちんとお伝えするという観点で行けば、もう少しゆっくり時間を取って丁寧に解説するような企画を別会場で実施するなど、台湾の茶業界全体で考えても良いのではないか、と思いました。
このメンバーで40分では、あまりに勿体無いな、と。

そもそも、FOODEXに来場できるのは、業界関係のバイヤーに限られます。
一般のお茶の愛好家向けのPRをするには適していません。
愛好家こそ現地の情報を求めていますので、そこを上手く繋げないものか、と感じました。
台湾茶の生産者と愛好家の交流イベント的なものができたら良いな、と。

 

国内ブースにも台湾茶の出展が

国内ブースの方にも、台湾茶の出展がありました。

まずは、拉拉山に工場を持つという茶聖殿さん

試飲で凍頂烏龍茶と蓮霧烏龍茶が提供されていました。
凍頂烏龍茶はかなり丁寧に作られているというイメージ。
蓮霧烏龍茶、というのは初めて聞いたのですが、果物のレンブを烏龍茶と合わせたものだそうです。
レンブをシャクッと食べたときに広がる香りがきちんと出ていて、なかなか面白いな、と思いました。
日本では表参道の遊茶さんで取り扱っているそうです。

祥雲茶坊のショーン・フレアさんのブースでは、取り扱っている台湾の各ブランドの紹介の他、茶器ブランド・宜龍(EILONG)さんの気合いの入った展示がありました。

台湾などでの展示会に出ているのと同じスタイルのブース構成だったそうです。

 

過渡期にある茶業界を反映

例年、FOODEXのお茶ブースを回っていて感じてきたことですが、出展者と来場者のミスマッチが目立つ気がしました。

FOODEX自体は、どちらかというとスーパーマーケットなどの大口のバイヤーが来るイベントというイメージで、かなり大口の商談が成立したりする場です。一発ホームランが期待できるイベントと言いますか。
それを期待して、海外から出展するケースも多かったでしょう(そうでないと、出展料・滞在費をかけてくる意味がありません)。

しかし、こうした量販店は、現在、高級茶を扱って「売れる」という手応えを掴んでいないこともあり、個人的に興味を持つことはあっても、ビジネスにはなかなか繋がりにくくなっています。
中国茶・台湾茶ブームでも来れば違うとは思いますが、急にお茶が飛ぶように売れるようになるとは思えません。

一方、中国茶・台湾茶の生産者・メーカー側は、低単価のお茶を大量に販売するというよりは、こだわりの高級茶を販売したいというニーズが強く、大口バイヤーさんとは、なかなかマッチングしないように感じます。

かといって、業務店など小口での販売となると、今度は日本国内での輸入業務をどこが担当するのか?が課題になります。
代理店があるところなら良いのですが、そうでない場合は、気に入ったとしても、どう入手して良いのか?で双方困ることになります。
台湾の自治体ブースに出展していたお茶屋さんなどは、特にそう思うかもしれません。

こういう状況ですので、経営的にクールに判断すると、中国ブースのようにお茶の出展は諦めざるを得ません。

主催者側もお茶とコーヒーの専門エリアを作るなど、てこ入れに懸命な努力をしていると思うのですが・・・
日本のお茶を取り巻く環境に問題があるというのが、一番なのですが、何か上手い繋ぎ方はないものか、と考えてしまいました。

 

今回も中国茶と台湾茶に絞って見ましたが、それでもやはり時間が足りません。
出遅れて1日半しか回れず、また色々お手伝いにも追われたということもあるので、来年はきちんと初日から時間を取り、速報レポートも出せるようにしたいと思います。

 

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お茶はなかなか難しい業界です・・・

 

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