中国旅行

春の四川省茶旅2019(5)蒙頂山躍華茶業

峨眉山から蒙頂山へ

3日目は朝から峨眉山市を出て、雅安市名山区へ向かいます。
峨眉山市の道路の脇には、2週間ほど前に開催された「第1回世界高山緑茶フォーラム」の幟などがあちこちに。

「世界の緑茶は中国を看て、中国の緑茶は峨眉を看る」がイベントのキャッチコピーだそうです。
これは峨眉山市のもう1社の大手茶業である”竹葉青茶業(竹叶青茶业)”が仕掛けたもの。
峨眉山の高級茶は高山で作っているので、「”高山烏龍茶”ならぬ”高山緑茶”というジャンルを確立してしまえ!」というかなり意欲的な企業戦略です。

この会社、業界の風雲児的な会社でもあるので、機会があれば訪れたいところです(実は訪問先を決めるときに、ここか峨眉雪芽で悩んだのです・・・)。
このイベントの詳細は、中国茶情報局「今年の春茶価格は、おおむね平年並みの見込み」(2019年3月5日付)や小泊先生のブログ記事にて。

バスで1時間半ほど走りまして、雅安市名山区に到着しました。
街の入口にある牌坊をパチリ。

こちらも「中国茶都」の1つなので、中国茶都の碑がありました。

中国茶都という街はいろんなところにあるんです。。。

目指すお茶工場は、観光名所を案内する看板と一緒に出ていて、かなり街では有名な工場のようです。

蒙頂山躍華茶業

やってきたのはこちらの会社。

蒙頂山躍華茶業さんです。
入口に「茶文化酒店」とあるように、お茶をテーマにした宿泊施設も完備していて、バリバリに茶旅の受け入れをやっている感じの工場です。
旅行ルートにも組み込まれているみたい。

エントランスも天井が高くて非常に美しい感じです。

最近、中国の茶産地では大きく2つの動きがあります。
一つは企業の集約化を進め、経営規模を拡大させています。
こういう会社が各地域に1社か2社はあり、これを”龍頭企業”と呼びます。
龍頭企業には補助金を注ぎ込んだり、地元の政府からの手厚い支援が行われたりして、地元の茶業を引っ張る存在になることが期待されます(蛇踊りの頭の部分と捉えると分かりやすい)。
峨眉山でいえば、竹葉青茶業と峨眉雪芽茶業がそれです。
おそらく、この茶業さんは蒙頂山の龍頭企業の1社なのだと思います。

もう1つの動きは、茶旅の受け入れです。
「お茶を生産するだけではなくて、旅行の受け入れもどんどんやれ」という指示が政府から出ています。
お茶を作って売るだけでは、茶という商品が動くだけですが、そこに旅行客が来るとなれば、宿泊に食事に・・・とさまざまな雇用が生まれ、地域経済への波及効果はより大きくなります。
そんなこともあって、大手の茶業者さんには「茶旅を受け入れる準備を整え、どんどん受け入れろ!」という指示が出ています。
ここは先に述べたような龍頭企業の1社なので、もれなくそうした流れに乗っているわけです(というよりも、政府の指示だから乗らないという選択肢は無い)。

今回は、雅安市政府とのさる強力なコネクションを活かした旅行なので、どうしても紹介される先は、このような茶業さんになります。
個人的には、もっと小さく、地道にやっている感のある茶業さんが好きなのですけれど・・・
ここは「中国の大手茶業の戦略と地元政府の茶旅振興策を知る」という路線に頭を切り替えることにしました。
これはこれで、なかなか得難い経験ではあるので。

代々の製茶一家

こちらの茶業さんは、代々製茶をしてきた家(制茶世家)一つのアイデンティティーになっています。
そのため、ホールにはご先祖様にお祈りをするような場が用意されています。毎年、製茶を始める前にはお祈りをするんだそうで。

それぞれの代の方の写真や絵なども展示されています。これは初代と2代目。

現在は6代目の若社長が切り盛りしています。
社長のお父さんである5代目の方がかなり優秀な方だったようで、それまで普通の農民だったところから、一代で大手の会社に育てたようです。

こちらの会社のロゴマークなどに描かれている人物は、この5代目です。社名の「躍華」とはこの方の名前です。
若社長が来る前に、少しご挨拶しましたが、できる経営者のオーラが漂ってました。タダモノではありません。

「代々お茶を作ってきた由緒正しいメーカー」というのが、ブランドイメージになっているようで、昔の家から持ってきたものや、古い製茶機械なども展示されています。

こちらは昔の製茶の様子ですね。

ガイドをしてくれたスタッフの方は、しっかり拡声器まで装備していて、非常に慣れています・・・

このような古い揉捻機もありましたし、さらにこちらは蔵茶の生産メーカーでもあるので、こんなものも。

蔵茶は茶葉が非常に硬い下の葉っぱの部分まで使うので、並大抵の力では揉捻できません。
それで、蒸した茶葉を袋に詰め、斜面の一番上から人が2人ぐらいで乗って、体重をかけながら踏みしめ、揉捻しながら降りていく・・・ということを昔はしていたようです。
もっとも、最近は揉捻機に取って代わられているようですが。

また、実際に手作業での釜炒りや揉捻などの製茶も実演しているスペースがありました。

実際に熟練した方が釜炒りをしているのを見られるので、観光向けになっているとはいえ、いろいろ見どころはあります。

自動生産ラインの見学

こうした大手の企業さんならではのものは、自動生産ラインの導入です。
社屋の裏にある、「名優茶自動化清潔生産ライン」なる建物(冒頭写真)も見せてもらいました。

こちらの2つは殺青工程の機械なのですが、こちらもやはり微波(マイクロ波)殺青機を導入しているとのこと。
やはり四川省の大手工場は大体入れているようですね。もっとも、こんなに早く普及しているとは思いませんでした。

これでやると色は綺麗な緑色が保てますし、釜炒りと違って焦げないし、量は作れるしとメリットは多いのですが、香ばしさがどうしても落ちるんですよね。
そんなわけで個人的にはあまり好きでは無いのですが、政府が推しているので、仕方ないのだと思います。
この会社ぐらいの規模になると共産党の支部が社内にあったりするので、経営者の一存で何でも決めるわけにはいきません。中国の大手茶業経営者は大変です。

工場の中で人がいたのは殺青後の揉捻にかかる前の篩分けの部分です。
ここは機械だけでは上手く出来ないのか、職人さんが必要のようです。
で、ここからラインは二手に分かれ、奥の方が蒙頂甘露の生産ライン、手前の方が蒙頂石花のラインだそうです。

甘露はぐるぐるっと回すタイプの揉捻機で、石花はよくある釜炒りの機械で成型していくので、形状や産毛の立ち方が変わるというわけです。なるほど。

残留農薬の検査を行う部屋もあり、このあたりの自主検査もできるようになっています。
工場も衛生的ですし、スタッフの方もキビキビ動いていて、衛生面の不安を持っている消費者の方もこれを見たら納得することでしょう。

なお、この工場、非常に広い建物なのですが、人員は5名で回るとのことです。すごい省力化・・・

工場の前には、蒙頂山から移植したという千年ぐらい?と見られる茶樹がありました。
左にいるのが、6代目の若社長です。
背がかなり高いのですが、それと比較してもかなり高い木です。6m以上はありましたね。

試飲とお買い物

昨日の峨眉雪芽茶業さんでは、あんまりお茶を飲ませてもらえなかったので、今日は主力商品を一通り飲ませて欲しいとオーダーを強めにしておきました。
まずは主力商品の4種類を試飲。

左上が蒙頂甘露、右上が蒙頂石花、左下が紅茶、右下が蒙頂黄芽です。
甘露と石花はやはり青いタイプでした。
新芽のフレッシュさは感じますが、香ばしさが足りません。おそらく、微波殺青の影響でしょうね。

紅茶はちょっと発酵がブレているかな?という印象で、今ひとつ。
蒙頂黄芽は今年のは悶黄を軽くしてみた、とのことなのですが、うーむ、これまた今ひとつ。。。
「この会社、大きいだけで技術が無いんじゃないか?」疑惑が個人的に持ち上がりました。

蔵茶も飲ませてもらい、こちらはなかなか飲みやすく仕上がっていて、これは良さそうだと思いましたが、蔵茶の工場は明日行くので、買うわけにもいかず。
「うーん、これは困ったな。(個人的に好みな)買うお茶が無いぞ・・・」と思っていたら、色々飲ませて興が乗ってきたらしい若社長が、「これも飲んでみる?」と出してきたのが、こちらのお茶。

華新露という同社のオリジナルの緑茶です。
どうも、数年前から作り始めたもので、全てを手作りで作っているこの会社のフラッグシップのお茶だ、とのこと。
全てを手作りなので、量が少なく、本当は出すつもりが無かったお茶だったようです。

製法的に「手作り」というところにピーンと来たのですが、飲んでみたら、やはり当たり。
香りもよく、味わいも余韻があって素晴らしい。これですよ、これ。
このほか、ダメ元で買ってみた、昨年の蒙頂黄芽は伝統的な悶黄を施したもので、素晴らしい出来でした。

どうも、この会社、優秀な職人さんは多数いて、手作りのものは大体美味いようです。
技術力があるから大きくなってきた会社なんだろうと思います。

となると、やはりあの生産ラインの問題ですね。おそらく、微波殺青がネックなんだろうと思います。
釜炒りをきっちりした後の補助的な用途に使うのであれば悪くないと思うのですが、これだけで殺青をやろうとすると釜炒り緑茶の良さが出ません。

5代目は、そのへんも分かっていて、敢えて手作りの華新露を新商品として投入し、手炒りの技術を保持しようとしたんだろうと思います。
政府に言われて機械を導入した結果、上手く行かなかったとしても、助けてはくれませんので。
このへんが、5代目の慧眼なんだろうと思います。

お買い物は、かなりの人数が一斉に注文をしたもので、お店のスタッフの方が大慌てに。
なかには、ここの会社の大きなお茶の缶を購入する方も出てきたり・・・
結局、かなりの時間がかかりましたね(^^;)

茶旅のお買い物タイムを、どのように短縮するかは今後の課題です。。。

 

続く。

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