お茶

台湾でお茶を買うノウハウ2018(4)お店での買い方編

続いては、お店での買い方編です。
初めて異国のお茶屋さんに行くとなるとドキドキの方もいるかと思いますので、ポイントと注意事項を少しご紹介しておきます。

事前準備:時間と食事のタイミングにご注意を

まず、お店に突撃する前の事前準備です。
ポイントは3つ。時間と食事のタイミングと予算です。

時間

お店で試飲をして買おうと思ったら、結構時間がかかります。
量り売りのお店で2種類ぐらい試飲をして買う場合、基本的な流れは、

入店 → 最初の試飲茶のグレードを決定 → お茶淹れの準備 → お茶を淹れる&味わう(3煎か4煎) → 次の試飲茶を決める → 前のお茶の片付け&次の試飲茶の準備 → お茶を淹れる&味わう(3煎か4煎) → お茶決めて注文 → お茶の計量&パッキング → お会計

という感じです。

台湾茶の場合、基本的に1煎でおしまいということは無く、何回も煎を重ねて飲みます。
良いお茶ほど煎が続きます。それが品質の良さの証明にもなります。
お店側は煎を重ねてもへたらない茶葉であることをお客さんに見せたいので、1つのお茶につき、最低3煎ぐらいは淹れて、飲ませてくれます。
飲みながらお茶について、ああでもないこうでもないと、おしゃべりをしていると、15分~20分ぐらいはあっという間に経ちます。
お茶屋さんってのは、時空が歪んでいるんじゃないかと思うぐらいです(^^;)

これを何度か繰り返して、好みのお茶を見つけます。
さて、それを注文・・・となりますが、量り売りの場合は、パッキング作業に割と時間がかかります。
普通は袋に詰めて、そのあとに真空パックの処理をしてくれるのですが、なんでこんなに時間がかかるの?と思うことも少なくありません。
その点、問屋さんはすごく手早いですけれど。

以上のようなことを考えると、オーソドックスな茶葉店だと、試飲をして買うなら、少なくとも1時間。
できれば、1時間半から2時間は欲しいな・・・というのが本音です。
焦ってお買い物をすると、「何でこんなものを買ったんだ?」となるのは、経験されている方が多いと思うので(^^;)

もちろん、新純香のように一度洗茶をして抽出時間を短縮しているお店とか、意翔村のように全部一気にテイスティングさせるような工夫をしている店舗だと、もう少し短くなるのですが。

良いお茶を選びたい場合は、旅行の計画を立てる際に、茶葉店訪問に少し余裕を持った時間を組み込んでおくと良いでしょう。
台北のお茶屋さんは、朝は弱いものの宵っ張りなお店は多いので、日中は市内の観光に充て、夕方以降に訪問スケジュールを組むのもありです。

食事のタイミング

お茶屋さんに行くと、あれこれお茶を試飲すると思います。
現地では、焙煎をかけていないお茶(これを「生茶」といいます)を出されることが結構あります。
このタイプのお茶は、香りは大変良いのですが、胃への刺激がかなり強めです。

空腹のときに生茶をガブガブ飲むと胃を痛めてしまったり、悪い方の「茶酔い」になり、気分が悪くなったりします。
極端な空腹の時は試飲を避けるか、事前に何か少しお腹に入れてから訪問することをオススメします。

また、直前の食事もお茶の香りや味をしっかり確認するために、辛いものや香辛料の強いものを避けた方が良いかと思います。

あと、お茶屋さんに行く計画を立てている日は、強い香水も避けましょう。
繊細な香りがわからなくなりますし、お店や周りの方にも影響が及びますので。

予算

買いたいお茶をリストアップし、予算をある程度決めていくと良いでしょう。
特に問屋系や茶人系のお店に行く場合は、クレジットカードが使えないことが多いです。
事前に現金を用意しておきましょう。

入店後の流れ

一応、お店に入ってからの流れもご紹介しておきましょう。

試飲をお願いする

お店に入ったら、店員さんに「○○茶を買いたいのですが、試飲は出来ますか?」と聞いてみましょう。
特にお目当てのお茶が思いつかない場合、凍頂烏龍茶と高山烏龍茶はどのお店にも大体あるので、そのへんからスタートすると良いかもしれません。

試飲OKだったら、多くの場合は試飲台に案内されると思います。
一般的な試飲歓迎の店では、お店に入ると「どうぞ、どうぞ」とすぐに試飲台の前に座らされるケースも多いです。

試飲の順番

さて、さっそく試飲・・・といきたいところですが、お茶を飲んでいく順番を少し意識した方が良いかもしれません。
その原則は2つ。

・清らかな香り・味のお茶を先、濃厚な香り・味のお茶は後
・値段の安い茶を先、値段の高いお茶を後

です。

ざっくりと言いますと、

・緑茶、文山包種茶、凍頂烏龍茶、高山烏龍茶は先
・木柵鉄観音、東方美人、紅茶、プーアル茶などは後

に飲んだ方が良いと思います。

これは味や香りが強いものを飲んでしまうと、舌や鼻がマヒしてしまい、清らか系の繊細な味と香りがよくわからなくなってしまうためです。

ただ、いくつも青っぽい(清らかな)お茶を飲み続けるのは、結構しんどいもの。
途中にやや濃厚なお茶を入れるなどして、少しアクセントをつけながら、試飲していくと良いでしょう。

あるいは、最初に「このお茶とこのお茶とこのお茶を買いたい」と伝えてしまうのも手です。
そうすると、お店の方のほうで飲む順番を考えてくれます。

次にお値段の話です。

先に良いお茶を飲んでしまうと、安価なお茶が悪くない出来であっても、美味しいと感じにくくなります。
良いのを先に飲んでしまうと、どうしても粗が目立ってしまうんですね。

経験上、コストパフォーマンスをきちんと判断するためには、お値段が下のランクから飲んでいった方が良いと思います。
何も無い状態で飲んだときに、「あ、これは良いお茶じゃないか」と思えれば、きっとお買い得なお茶です。

もちろん、これはルールでも何でも無く、個人的な経験に基づくお薦めの順番です。
好きなように飲んでいただいて全然良いと思います。

聞香杯の使い方

台湾では烏龍茶を飲む時に、聞香杯(もんこうはい)という独特の茶器を使うことがあります。

大体、細長くて背の高い器が聞香杯で、こちらにお茶が注がれた状態で提供されます。
その中に入っているお茶を、隣にある背の低い茶杯に移してから飲みます。
移し方は聞香杯の上に茶杯をかぶせてひっくり返す、というアクロバティックなやり方をする人もいますが、普通に傾けて注いで移し替えるだけで全然構いません。

茶杯にお茶を移し、空になった聞香杯。
これを鼻に近づけて、内側の残り香を嗅ぐことによって、香りの変化を楽しむという訳です。

・・・が、時々

ん、特に香りなんかしないぞ

と感じることもあります。

それは、おそらく熱すぎるからです。
あまりに熱々の時だと、熱い空気しか来なくて香りが良くわからないんですね。
熱すぎて鼻のセンサーが利かないんです。

一呼吸置いて、少し冷ましてから香りを聞いてみると、あまーい香りがするようになるかと思います。
温度が下がるとまた別の香りがあらわれるので、ちょこちょこ確認してみて下さい。
良いお茶ほど香りが長く続きます。

お茶の飲み方

台湾茶は、特に作法というものがあるわけでは無いので、自由に飲んでいただけるものです。
とはいえ、おいしさを感じやすい飲み方というのはあるので、それを少しご紹介します。

大体のお店では、茶杯はお猪口ぐらいの大きさだと思います。
日本茶や紅茶の感覚で行くと随分と量が少なく感じるのではないでしょうか。

思わず、グビッと一気飲みしたくなるところですが、その気持ちを少し抑えて、小分けにして少しずつ飲んでみると良いと思います。
個人的な飲み方ですが、私は大体3口ぐらいで飲んでいます。

まずはアツアツのところを一口。
口から喉にスムーズに落として、まずはお茶の香りを味わってみましょう。

一呼吸置いて、二口目。お茶の温度は、少し下がっています。
このときは、口の中に少し含んで、舌の上で転がしてみるのも良いと思います。
熱いときよりも、お茶の味を感じやすくなっているので。

さらに一呼吸置いて、三口目。
結構冷めてきているかもしれませんが、その分、お茶の甘みを感じやすくなっているはずです。
甘みは温度が下がったときの方が感じやすい性質なので。

こんな感じで、温度を少しずつ変えながら2~3煎。じっくり飲んでいきます。
すると、良いお茶の場合は一度、喉に落ちたお茶の香りや甘みが、喉の奥の方から口の中へ戻ってくるような感覚になると思います。
まさにこれが「余韻」であり「回甘」というやつです。

口に含んだときは、味や香りが淡いように感じていたのに、戻りの香りや甘みが心地よく残っているようであれば、かなり良いお茶だと思います。
お値段の安いお茶には、こういう感覚はあまりありません。そこが品質の違いです。

ゴクゴク、ガブガブと飲むお茶も良いのですが、とびきり良いお茶は、こうしてチビチビ飲むと特徴や良さがよりハッキリします。
余韻の長い、良いお茶をゆっくりと飲んでいると、お酒を飲んでいる時と同じぐらいの満足感を感じられることもあるでしょう。
気分が上気するような感じになることもあります。これが良い意味での「茶酔い」です。
台湾茶や中国茶に目がない人たちは、大体こんな感覚を味わっています。
最初は感じないこともありますが、何度かお茶を飲んでいるうちに、「あ、これか」と気づくときが来るのではないかと。

くどいようですが、これは作法でも何でも無いので。
自由にお好きなように飲まれてください。

お茶の注文

十分に試飲をして、「うん、これは良いお茶だ」と納得した場合は注文をします。

何g単位で販売してくれるかを確認し、その単位の倍数で注文をします。

このときに、パッキングのサイズを聞いてくることがあります。
300gを買う場合に、300gの1パックにするか、150gの2パックにするか、のようなことです。
ここは何g単位なら対応可能かを聞いて、お願いするようにしましょう。

1つの大きなパッケージを3ヶ月かけて飲み切るよりも、2つに小分けにして貰って、それぞれを1ヶ月半で飲み切るようにした方がお茶の鮮度は保たれ、美味しく飲みきることができます。
お店側もお客さんにお茶を美味しく飲んでもらうためなので、対応できる範囲で応じてくれると思います。

注文のタイミングは気になるお茶を全部飲んで、最後にまとめてでも良いのですが、急ぐ場合などは気に入ったものの試飲が終わったら、その都度、注文してしまうのも手です。
試飲の相手をしてくれる方と別のスタッフさんがいる場合は、その人が代わりに詰めてくれるので、最後のパッキングの時間が短縮でき、効率的です。

茶器選びは、お茶選びの後に

お茶屋さんの中には、茶器も揃えているお店があります。
茶器を選ぶタイミングとしては、”お茶を選んだ後”がオススメです。

お茶を選んだ後、パッキングをお願いするので、少し時間が空きます。
この時間を使って、茶器を見ると時間が有効活用できますし、買うお茶が決まっていますから、どういう茶器が向いているかのアドバイスも受けられます。

お店側にとっても、その方がありがたいのです。
ひっきりなしにお客さんが来るお店では、”試飲台を空けてあげないと、次のお客さんが試飲できない”ということもあります。
特に年末年始やGWなど観光客が集中する時は、周りを少し見て譲ってあげると、お店の方も助かると思います。

そうそう。
お店で味わったのと同じようなお茶を淹れたい、と考えている場合は、試飲のお茶を淹れる時の茶道具に注目しておきましょう。
素焼きの急須を使うのと磁器の蓋碗では、お茶の味わいが全く違って出ます。
帰国後に自分でお茶を淹れて、「現地で味わったのと味が違う」と感じる大きな要因の一つに、器の違い、特に陶器と磁器(うわぐすりが掛かっているかいないか)の違いにあったりします。
お店の人がどんな茶器でどう淹れていたか、は自宅に帰ってからお茶を上手に淹れるためのヒントになります。

お会計の際は、渡されたお茶の確認をしっかりと

選んだお茶のパッキングができあがったら、お会計になります。

その際、「同じような袋で何が何だかわからない」「頼んだお茶が会計はされているのに入っていない」なんてことが、たまにあります。
お互いに後で嫌な思いをしないよう、その場できちんと確認しましょう。
海外旅行の基本は「トラブルはその場で解決」ですので。

分かりにくいパッケージの場合は、マジックを借りて、自分でお茶の名前を記入しちゃうのもありです。

お店の接客について

日本人に優しく、割とサービスレベルは高い方の台湾ですが、そうは言っても、日本ではありません。
店員さんがお客様に不快な思いをさせるというのは、日本では大変稀です。
が、台湾では大ざっぱに言って10回に1,2回は「むむむ?」ということがあります。

これは、忙しい時に無茶なお願いをしてしまったり、たまたま店員の機嫌が悪い、とかいろんな理由があります。
そういう話をしますと、

「こちらは客なのにプロ意識に欠ける!」

と多くの日本人は思うかもしれませんが、それは日本基準の考え方です。台湾は外国です。

何かあったら、「まあ、そんなこともあるか」程度に、大らかな気持ちで行かれることをオススメします。
いちいちカリカリしていたら、旅が楽しくありませんので。

どうしても良い接客がいい、という場合は、向こうの気持ちにも余裕がある、比較的空いている時間を狙っていくと良いでしょう。
ただし、朝一番やオープン直後などは向こうの気分も乗っていないことが往々にしてあるので、午後以降がいいでしょうね。

気に入ったお店にはリピートしましょう

当たり前の話なのですが、お店の方もリピートできてくれたお客さんは、とても歓迎してくれます。
一見さんで、色んなお店を回るのも良いのですが、どこかベースになるお店が1軒あると、お茶を飲むのがとても楽しくなると思います。

お店の方と顔なじみになってくれば、普通には出さないようなとっておきのお茶を出してくれたり、色々な便宜を図ってくれることがあります。
良いお茶というのは無限にあるものではなく、どうしても量が限られます。
そうしたお茶をよく知らない一見さんに出すのか、常連さんに出すのかと考えれば・・・実に単純な話です。

「ここは良いな」というお店を見つけたら、是非また再訪していただいて、買っていったお茶の感想などをフィードバックしてあげると良いと思います。
商売とはいえ、お店というのは、やっぱり人と人との交流が根底にあるので。
そこを大切にするお客さんは、お店にも大切にされるでしょう。

 

以上のような点に気をつけておけば、現地でも楽しくお買い物ができるのではないかと思います。

まともなお茶屋さんは、「わざわざ外国から、自分たちの国の文化の1つである台湾茶を好んで買いに来た」と考えてくれるので、言葉が多少通じなくても、何とか頑張ってコミュニケーションをとろうとしてくれます。
お茶屋さんは決して怖い場所ではないので、ほんのちょっとの勇気を持って、一歩を踏み出していただければと思います。
お茶を挟んでの楽しいひとときは、きっと旅の良い思い出になることでしょう。

 

ラストは帰国後のお話。
思うようにお茶が美味しく入らないときの対処法などをご紹介します。

 

続く。

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