お茶

中国茶の世界にようこそ2019(1)中国茶の全体像

12月18日(火)の夜8時57分から放送されるTBSテレビ「マツコの知らない世界」は、「中国茶の世界」がテーマだそうです。
今回、中国茶を紹介するのは、女優の風吹ジュンさん。
風吹さんは、雲南省の奥地・西双版納にまで行ってしまうほどのガチの中国茶愛好家なので、大変楽しみです。
私も一緒に台湾の東方美人の茶農家さんに行ったことがあります(大勢でしたけど)。

それを記念しまして(←なんでも記念してしまう)、「中国茶、始めてみよっかなー」という方向けに、ざっくりとした中国茶入門的な記事を書いてみたいと思います。
題して、「中国茶の世界にようこそ」。
あんまり細かすぎても呆れられてしまいそうなので、今回は簡潔に以下のような3話構成にしてみたいと思います。

(1)中国茶の全体像 ← Here
(2)様々な名茶と買えるところ
(3)簡単なお茶の淹れ方と茶器

うーん、ざっくり。
以前、古いブログの方で「中国茶の学び方」って連続記事を書いたんですが、そのお茶の説明記事だけでも8話構成ですからね。
なんとなく概要を掴んでもらって、あとはお店なり、お友達なり、お教室なりでやっていただくということで。

お茶とは何か?

話を始める前に、まず大切なお話を。
「ああ、中国茶って杜仲茶とか苦丁茶とかでしょ?」と言われることもあるんですが、大抵の中国茶愛好家はムッとします。
なぜかというと、お茶には大きく分けて2つあるんですね。

「茶」と「茶外茶」
チャノキから作るお茶(狭義の「茶」)
緑茶(煎茶、釜炒り茶、抹茶、龍井茶etc…)
烏龍茶(鉄観音、凍頂烏龍茶、東方美人茶etc…)
紅茶(ダージリン、アッサム、キーマンetc…)
黒茶(プーアル茶、茯茶etc…)
白茶(白毫銀針、寿眉etc..)
黄茶(君山銀針、蒙頂黄芽etc…)
花茶(ジャスミン茶、桂花烏龍茶etc…)

チャノキ以外のお茶(茶外茶・代用茶)
杜仲茶
苦丁茶
ルイボスティー
ハーブティー
麦茶
ハブ茶
トウモロコシのひげ茶 etc…

「チャノキ」というのは、いわゆるお茶の木の植物としての名前です。
学名(科学的な名称のこと)を、Camellia sinensis(カメリア・シネンシス)といいます。
ツバキ科ツバキ属ということで、ツバキの仲間です。ツバキに似ていますが、カフェインが含まれることなど、いくつかの特徴があります。

浙江省杭州市の龍井茶の茶畑

このチャノキを用いて、みなさんがご存じの緑茶、紅茶、烏龍茶などが作られます。
理論的には一本の木から、どれも作れます。
が、実際にはチャノキにも品種が無数にあり、それぞれ個性(含まれている成分の比率)が異なるので、緑茶向き品種、紅茶向き品種など、向き不向きがあります(さらにいえば、肥料のやり方など育て方も微妙に違います)。
この関係性は、リンゴにもたくさんの品種があり、生食して美味しいものと焼きリンゴのように加熱したときに美味しくなるものは異なるのと同じです。

品種の違い。左から大紅袍、肉桂、水仙(いずれも烏龍茶用)。

 

一方、チャノキ以外の茶の話をしますと、植物を煎じて飲むものを一般に「茶」と呼んでいます。
中国ではチャノキの茶と区別するために、こうしたお茶を「茶外茶」あるいは「代用茶」と呼びます。

これらは植物がそもそも違うので、それぞれの味わいや香りだったり、効能というのは千差万別です。
ぶっちゃけ、絶対値としてはあんまり美味しくないので、この手のお茶は比較的「効能推し」になることが多いです。
※チャノキのお茶より本当に美味しいものだったら、そちらの方が世界的に普及していないとおかしいですよね。

一般に「中国茶が好き」とおっしゃる方は、茶外茶にはあまり興味・関心が無いことが多いです。
多くの中国茶愛好家がその魅力の虜になっているのは、「チャノキ」のお茶です。
こちらは、それこそ産地や品種、ビンテージや作り手など、ワインやウイスキーなどのお酒並みにこだわって飲むこともできます。
また、アルコール飲料に匹敵するぐらい感動的に美味しいものもあったりします。

中国茶好きの方は、「チャノキ」から作られたお茶の味わい深さや幅広さ、さらにはそれを取り巻く文化などに魅せられていることが多いのです。
彼・彼女たちが「中国茶」と言ったら、それは中国や台湾(あるいは近隣国でも同じ製法)で作っている、チャノキのお茶のことです。
まずは、これがポイントの1つめ。

歴史からみる、中国茶と日本茶の違い

チャノキの原産地は、中国の南西部(雲南省)やミャンマー、ラオスのあたりと推測されています。
原産地に近いことから、中国では古くから人類が茶を使用してきた歴史があり、いわば「茶の母国」として知られています。

日本も、茶が中国から直接伝わった国の一つです(遣唐使の時代と鎌倉時代に二度伝来)。
当時の中国における茶の製法は、茶葉を蒸して作る、緑茶の製法でした。
その作り方やお茶の淹れ方は、現代の日本の緑茶(煎茶・抹茶)や日本茶道などのベースになっています。

ところが、中国では明の時代(1368年~)以降に、お茶の製法に劇的な変化がありました。
具体的には、茶葉を蒸すのではなく、釜炒りをするという方法に変化していきます。
この製法の変化がもたらした影響は非常に大きく、その後、中国では烏龍茶や紅茶など茶葉の香りを追求した、様々なお茶の作り方が生まれていきます。
蒸すことをやめることによって、製法のバリエーションが増えたのです。

龍井茶の釜炒り

中国の製法は変化したものの、日本では従来の製法を進化させる方向で進んだ結果、中国と日本で親しまれているお茶は、かなり異なるものになりました。
同時に人々がお茶に求めているものの価値観が違っています。

日本では、お茶というと「甘み」「旨み」「渋み」「苦み」などが渾然一体となったものを美味しいと感じるように思います。
しかし、中国の場合は、お茶はとにかく「香りが良くて」「甘くて」「形が美しくて」「渋みや苦みが無い」というところを求めています。

日本茶の美味しさは認めるところなのですが、中国茶の渋みがなく香りの高い味わいは、また違った魅力があります。
個人的には、渋みが少ない点は、「ペットボトルのお茶しか飲んだことが無い」という方にも親しみやすいものではないかな、と思います。

さらに日本茶はどちらかというと、現在のところは全国的にやぶきたという品種が圧倒的に強く、さらに合組(ブレンドをして品質を均質化すること)をするため、際立った個性が隠れるように思います。
優等生的なお茶といいますか。

一方、中国の場合は、まず国土が広い分、様々なチャノキの「品種」があります。
お茶における「品種」の違いが味わいに与える影響は大きく、お茶の味わいや香りの成分の違いに繋がります。
たとえば、蘭の花のような香りのお茶だったり、葡萄のような香りのお茶など、「これは本当に、あの青いお茶の木からできた飲み物なんだろうか?」と不思議に思えるようなお茶もあります。
さらに合組の技術が日本とは違う形で発展しているため、個性の際立ったタイプが多いように感じます。

味わいの個性の違いと、お茶としての香りや味わいの振り幅の大きさが、中国茶の魅力の一つであると思います。

銘柄が無数にある中国茶

さまざまなお茶が並ぶ

さらに、中国茶の大きな魅力を一つあげるとしたら、「銘柄が無数にあること」だと思います。
中国では2017年には261万トンのお茶が生産されています。
生産量は世界でも圧倒的No.1です(ちなみに、2位はインド132万トン、3位はケニアで43万トン。日本は約8万トン)。

お茶の多くは、その地域の地場に根付いたお茶で、地元独特のお茶の品種や製法で作られることがほとんどです。
中国では国土が広大な分、地域の気候や環境の差が大きいため、地域独自の様々な品種が存在しています。
さらに先に述べたように、明の時代以降は様々な製茶法が増えていったこともあり、銘柄の基本となる、製法×品種の組み合わせの数は天文学的数字になります。

どこまでを銘柄とみなすかの見解が違うので、一概には言えないのですが、著名な中国茶の大事典に載っている茶名は一千種以上あります。
さらに毎年のように新しい名茶が登場していますので、今はもっとそれ以上に増えているのではないか・・・と思います。

とにかく、中国茶は「たくさんある」のです。

たくさんのお茶があるだけでなく、香りや味わいもそれぞれに個性があります。
個性派だけを飲んでいくのでも、数百銘柄はあるのではないかと。

さらに、お茶というのは、その年の天候や周囲の環境に影響されるという農作物としての面と工芸品のような繊細な技術を要求するという面があります。
そのため、同じ銘柄であっても、季節、茶畑の場所・状態、作り手の茶師さんの個性、あるいは製茶する日の天候によっても、味わいや香りが違ってきます。
飲みつけていると、そのあたりの微妙な差も分かってきますので、ワインにおける畑ごとやシャトーごとの違いのような飲み比べも出来たりします。

そんな個性豊かなお茶たちを違いを楽しみながら飲んだり、気分に応じてお茶を選ぶ楽しみも中国茶にはあります。

お茶選びのポイントになる「六大分類」

たくさん種類があるとなると、それを覚えるだけで一苦労です。
そのため、中国ではお茶の種類を大まかな製法によって、6つに分類しています。
それが「六大分類(ろくだいぶんるい)」というもので、これは基本なので、覚えておきましょう。

茶類 製法/特徴
緑茶
Green tea
茶を摘んだら速やかに釜で炒る(あるいは蒸す)。
/生葉が持つ青さ・フレッシュさを活かした緑の茶
紅茶
Black tea
茶を摘んだらしおらせ、揉んだり切ったりして発酵(酸化)させる。
/生葉を発酵(酸化)させ、甘い香りを引き出した紅い茶
烏龍茶
Oolong tea
茶を摘んだらしおらせ、徐々に揉んで一部を発酵(酸化)させる。
/生葉を部分的に発酵(酸化)させ、香りと味わいのバランスを追求した茶
白茶
White tea
茶を摘んだらしおらせて、わずかに発酵(酸化)させる。
/産毛の多い品種の生葉をわずかに発酵(酸化)させ、香りと甘みを引き出した茶
黄茶
Yellow tea
緑茶と同様の作り方をし、水分や熱で蒸れさせて葉を黄色くする。
/茶葉を蒸れさせることで色を黄変させ、口当たりをまろやかにした茶
黒茶
Dark tea
天日干し乾燥した緑茶を山積みにして、水を吸わせて発酵させる。
/水分と熱、微生物などの作用で渋み成分を変化させ、味わいをまろやかにした茶
※再加工茶
Reprocessing tea
一度作った茶葉に手を加えるもの。
緊圧茶・・・茶葉を蒸したのちに圧力をかけて固める。
ジャスミン茶・・・緑茶を花と一緒に置くことで、茶葉に花の香りを吸わせる。

「何が飲みたいの?」と聞かれたときに、とっさに思いつくものがなければ、この分類名を挙げれば、そんなに困らないと思います。
お店であれば、そのジャンルの中で、オススメを何種類か持っているのが普通なので。

淹れ方も、この分類を押さえておくと、ある程度、初見のお茶でも対応できるようになります。
あとは、実際淹れてみて、微調整ですね。
※初見から抜群に美味く淹れるってのはプロ(茶芸師さんとか)でも難しいので、実際、プロでも練習します。

同じ分類とはいっても、それぞれの中でも、かなり幅はあります。
たとえば、烏龍茶は、緑茶のように爽やかな緑色をしたお茶もあれば、ほうじ茶のように焙煎の効いた香ばしいお茶もあったりします。
このへんの違いが、いわゆる「銘柄」だったり、仕上げの違いになってきます。

それぞれのジャンルで代表的なお茶というのがいくつかあります。
これらを実際に一通り飲んでみると、「こういうお茶が好き」と答えられるので、知れば知るほど、飲めば飲むほど、語彙力が増えていくと思います。
最初は、なんだか凄く難しいように感じるかもしれませんが、ちゃんと筋道があるので、そこを押さえておけば、案外簡単です。

具体的なお茶の銘柄については、次回に。

続く。

 

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