お茶

台湾のお茶ガイド(3)凍頂烏龍茶

台湾のお茶ガイド。
第3弾は、凍頂烏龍茶です。

改良を積み重ねてきた名茶

凍頂烏龍茶(とうちょううーろんちゃ)は、日本でも、もっともよく知られている台湾茶かもしれません。

お茶の葉っぱは、小さくコロンと丸まった形をしています。
伝統的なものは焙煎が加わり、やや茶色っぽくなっています。写真は伝統的なものです(濃香)。
近年では緑色を保った、高山烏龍茶に近い色味のものもあります(清香)。

伝統的なものは、写真のようにやや茶色めの水色。烏龍茶ならではの発酵による甘い香りと、火入れによる香ばしさがあります。
清らかタイプは金色の水色で、爽やかさとしっかり感を兼ね備えています。

凍頂烏龍茶のふるさとは、南投縣の鹿谷(しかたに・ルーグー)郷。
標高の低い平野から中央山脈を少し入ったところにある街です。

凍頂山ばかりにスポットが当りがちですが、あちらを見ても山、こちらを見ても山な感じのところです。
山にはお茶の樹、そしてヒョロッとしたビンロウの樹が植わっています。
山の中にあり、河や湖などもあるので、霧も出やすい環境です。
高山ほど険しい山ではないので、人も住みやすく、コントローラブルな気候の街、という感じがします。

凍頂烏龍茶は、地元の鹿谷郷農会(農協)の定義では、鹿谷茶区で青心烏龍種から生産された半球型のお茶(製法的には半球型包種茶。発酵の比較的軽い烏龍茶)ということになっています。
その凍頂烏龍茶を一躍、大ブランドに押し上げた原動力は、1970年代半ば頃からのコンテストを通じた技術向上の歴史だと思います。

もっとも著名な鹿谷郷農会が実施するコンテストは、1976年から始まり、現在は春と冬の2回行われています。
腕自慢の生産者が、そのシーズンに作った最高のお茶をエントリーする、「ガチ」なコンテストです。
昨年の冬茶のコンテストは6500点以上の応募があり、ここを勝ち抜いていくことは並大抵のことではありません。
鹿谷の生産者の方にとって第1位の特等奨を取ることは、何よりの栄誉です。
そこを目指して、日々研究に励むからこそ、品質がどんどん高まってきたといえると思います。

また、コンテストの審査基準や受賞するお茶の傾向は、市場の動向などに合わせて、微修正が繰り返されてきています。
具体的には発酵の程度や焙煎の深さなどが、微妙に変化していっています。現在は中発酵、中焙煎ぐらいのような?気がします。

コンテストの評価基準が動けば、生産者の作るお茶のタイプも、それにあわせてスライドしがちです。
このことにより、凍頂烏龍茶の個性を市場のニーズに合わせて変化させていく働きもしてきました。
凍頂烏龍茶のパーソナリティーを語る上では、コンテストは外せないかな、と思います。
#もっとも、コンテストで受賞するタイプが、必ずしも好みに一致するとは限らないんですが(^^;)

高山烏龍茶を「素材の良さをそのままに味わうお茶」というタイプと位置づけるならば、凍頂烏龍茶は「作り手の技術を味わうお茶」というところでしょうか。
個人的には、”職人さんが細かな仕事をきっちりやる江戸前のお寿司”というイメージですね。
量産品は別ですが、丁寧に作ったお茶を飲むと「いい仕事してますね~」と言いたくなるお茶が、凍頂には多いです。

焙煎だけを請け負う「焙煎師」という方がいて、それでも商売として成り立っているのを見ると、他人の仕事の良さを重んじる文化があるのかなとも思います。

そんなクラフトマンシップの漂う地域ですが、コンテスト茶を除けば、凍頂のお茶は、お値段的には控えめなものが多いんですよね。
高山と比べると生産コスト的に有利ということもあるのですが、凍頂のお茶が好きな方には嬉しいところです。

 

クオリティーシーズン

凍頂烏龍茶のクオリティーシーズンは、コンテストも開かれる春と冬の2回です。
春のコンテストは5月中に審査して6月初めに発表、冬のコンテストは11月~12月初めに審査して12月半ばに発表されます。
この時期までに、良いお茶が出揃う感じでしょうか。

夏や秋にも製茶は行われていますが、品質的にはやはり少し劣ります。相場も少し低くなります。
とはいえ、秋茶などはタイミングによってなかなか美味しいものがあったりするので、侮れません。

 

オススメの淹れ方

凍頂烏龍茶は、香りと味わいのバランスが命です。
茶葉は、かなりきつく丸まっており、火が入っているとなかなか解けにくいため、これをきちんとお湯で解してあげることが重要になってきます。
高温を維持し、少し高めの位置から湯を注いで、水圧を利用するなど、です。

香り優先であれば、香りが吸収されにくい磁器の茶壺や蓋碗を使い、十分に予熱した後、高温(95℃以上)で淹れるのが美味しいと思います。
ただ、火入れと発酵の過程で、少し苦みや雑味が出ることもあるので、その場合は素焼きの茶壺を使って、味をまろやかにする方法もあります。少し厚手の茶壺でも良いと思います。茶色っぽい水色のお茶は、特に茶壺が似合うような気がします。

 

凍頂烏龍茶の技法を受け継ぐお茶

凍頂烏龍茶は厳密な定義で行けば、鹿谷茶区のお茶、青心烏龍種のみ、なのですが、ここで培われた製法を様々に応用したお茶があります。
というよりも、凍頂烏龍茶というのは、もはや「凍頂式」烏龍茶とでも呼ぶべきぐらいに、台湾の中に浸透したオーソドックスな製法になっています。

新品種のお茶

例えば、新品種である金萱(きんせん)や翠玉(すいぎょく)、四季春(しきはる・しきしゅん)といったお茶です。
これらのお茶は、青心烏龍種よりも生産性が高いので、お値段もお手ごろに。
さらに、ハッキリとした香りの特徴があるお茶なので、こうしたお茶が品種名のみで金萱茶、翠玉茶、四季春茶として、売られているケースも多いです。
金萱は、奶香とよばれるミルクっぽい香り、翠玉はジャスミンのような花っぽい香り、四季春はかなり強めの香りがするのですが、香りのタイプとしてはジンジャーリリー(ハナシュクシャ)のようだと言われます。
これらは品種の個性を際立たせるために、発酵が軽めで作られることが多いように感じます。

 

機械摘みなどで量産化したお茶

また「価格の安さも品質である」というスタンスを取り、機械摘みや製茶機械を積極的に導入して、できるだけ手ごろな価格でお茶を大量生産しているケースもあります。

鹿谷よりも平野に近い、南投縣名間(めいけん・めいかん)郷などは、こうした生産者が多い地域です。
翠玉や四季春など、香りに個性がありつつ、生産性の高い品種を積極的に導入。
1年に6回もの茶摘みを実現するなど、超高効率の茶業を行っている地域です。
生鮮食品のようにフレッシュなうちに飲み切るのが大前提ですが、お手ごろな価格で、普段飲みには十分すぎる品質のお茶を作っています。

こうしたことができるのも、凍頂烏龍茶などで培われた、確かな技術があってこそです。

蜜香烏龍茶・貴妃茶

変わり種のお茶としては、夏場にウンカという害虫に噛まれた茶葉を使い、独特の甘い香りを持ったお茶を作っているところもあります。
蜜香烏龍茶(みつこううーろんちゃ)だったり、凍頂では「貴妃茶(きひちゃ)」という商品名で呼ばれているお茶です。
このお茶の香りのメカニズムは、東方美人茶と同じものです(詳しくは東方美人の回で)。
凍頂烏龍茶のように丸まった形状をしていて、発酵と火入れが少し強めのお茶なのですが、独特の甘い香りがします。
特徴的な香りなので、好き嫌いはハッキリと分かれそうですが、見つけたら試してみてください。

 

続く。

 

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素材の高山、技術の凍頂、コスパの名間ですね

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