西湖茶葉市場へ
510のバスに乗り、市内方面へ。
今度は途中の転塘東(转塘东)バス停で降りてみます。
そこから徒歩15分ほど。
西湖国際茶博城へ移転する予定の西湖茶葉市場に来てみました。
入ってみると、かなり卸向けな雰囲気の茶葉市場でした。
ほとんどが龍井茶を扱っており、大袋単位の大口の商いをしているようで、小口のお願いはちょっとしづらい雰囲気(^^;)
上海などの都市部にある小売も積極的な「茶城」のイメージではなく、産地の「交易市場」という感じです。
さて、西湖龍井茶は、杭州市西湖区で作られている龍井茶のことです。
※より正確には、その範囲内で生産し、さらに原産地保護の認証を通った茶葉。
西湖龍井茶というと、日本人のイメージでは全て西湖の周りで作っている・・・と思うかもしれませんが、西湖は西湖区の東の端。
実際には、そこから西側の地域で、たくさんの西湖龍井茶が作られています。
なので、「西湖から湧き上がる霧に包まれて育つから云々」というのは、まあ、ごく一部のマーケティング用のイメージですね(^^;)
一応、産地の中でも区別はあり、著名産地である獅峰・梅家塢・龍井・翁家山などは一級保護区。
それ以外の地域は、二級保護区という指定になっています。
先程行った双霊村も、二級保護区の1つです。
ここの茶葉市場は、西湖区の茶産地のちょうど中心付近にあり、一級保護区と二級保護区の境目ぐらいにあります。
そのため、おそらくは二級保護区で生産されたお茶、あるいは近隣の富陽区(2014年に富陽市から改編)などで生産されている、いわゆる「浙江龍井」を集約し、一級保護区や杭州市内の各所に流しているという役割を担っているものだと思います。
一級保護区産と二級保護区産のお茶には、相場に差があります。
ですので、例えば一級保護区の梅家塢で茶楼(農家茶館)を経営する茶農家が、そこそこ品質の良さそうな二級保護区のお茶を、ここから仕入れて売れば、お客さんは西湖龍井茶が安く買えたと喜び、茶農家さんは差額が儲かる。
梅家塢産ではありませんが、西湖龍井には違いないので、商売としてはウソではありません。
こういうのは良くあることなので、たとえば「龍井村の農家で直接買ったから安心」というのは、あまり説得力が無いかな、と私は思っています。
お茶には”位置情報”が書かれていないので、本当に見分けようと思うのであれば、素性の明らかなお茶をテイスティングしまくって、地域ごとの土壌や気候、製茶の傾向などによる、微妙な香味の差異を舌に叩き込むしかありません。
そうした素養を身につけるには、龍井を専門に追いかけ、膨大な量のテイスティング経験を積まないと、まず難しいので、とても専業ではない人間の手には負えません。
結局はそういう能力を持っていて、嘘はつかないと思える茶商を見つけるか、茶摘みから製茶まで完全に見張って、そのお茶を買ってくるしかないんですが・・・まあ、いずれにしても難しい話です(^^;)
・・・と、そんな西湖龍井茶の流通を考えさせられる現場でした。
こんな事情ですので、台湾茶のように、どこの畑のものまで指定したりする枠組みで見るのは、現段階の中国茶ではかなりハードルが高いと思います。
国土が広すぎるし、作り手の数も多すぎるので。縮尺を変えて見ないといけないかな、と。
ただ、これも中国はITで変えようとしています。
大手メーカーや一部の著名ブランドなどではお茶の缶に付いたQRコードにスマートフォンをかざすと、生産地や農薬の来歴などが分かるようなWebページにジャンプする、トレーサビリティーシステムを開発しており、実用化させています。
このようなシステムを整備するとなると、茶業の担い手は、ある程度の設備投資ができる企業体にならざるを得ないのですが、そんな変革も急激に起こっているのが中国の茶業界です。
欧米の人たちが、これがお茶の世界のスタンダードだと思い始めたら、日本や台湾の茶業者はどうするのだろう・・・と、やや心配になります。
西湖へ
茶葉市場がちょっと空振りな感じで終わりましたので、少し早めに予定が終わりました。
そこで、昨日、飛行機が順調なら行くはずだった湖畔居にバスで向かいます。
ただ、この日は土曜日。
休日の杭州は観光客でごった返すので、道路が慢性的に渋滞しています。
地下鉄ができたといっても市内の中心部だけで、龍井や六和塔などの周辺の観光地に行くには車しかないので、相変わらずの混雑ぶり。
途中から、動物園のあたりを抜けていく路線の方が早いとみて、そちらへ乗り換え。
ここまでは大正解で、スイスイと街の中まで下りて来られました。
ただ、やはり西湖の湖畔まで出ると、車が全く動きません。
そこで途中下車し、西湖の湖畔をブラブラと歩きながら、湖畔居を目指しました。
ぼやーっと、対岸が見える西湖。
何度も来ていますが、西湖はあんまりピーカンでパリッと晴れているイメージが無く、いつもこんなイメージのような気がします(^^;)
湖畔居にて
湖畔居へ着くと、休日ともあって、なかなかの混雑ぶり。
お店に入ると、「うちは最低消費180元ですけどいいですか?」と確認が。
知ってます、全然問題ありません。
でも、初めての人とか、メニュー見てびっくりするのかもしれませんね。
お店は結構賑わっています。
しかし、みなさん、マナーが素晴らしい。大騒ぎするような人はいません。
中国人はマナーがなっていないという方は、ここに来てから言ってもらいたいですね。
メニューを見て、杭州の緑茶といえば・・・ということで径山香茗(径山茶)を注文しました。
今年の新茶ということもあり、フレッシュでじんわりとした程良いうまみ。
龍井のように火の香りが強いタイプではないので、繊細な印象です。美味しい(^^)
お昼は結局、帰りのバスを待っている間にバス停でクラッカーをかじっただけだったので、盛りだくさんのフルーツをパクパクと食べます。
ここのお茶請けは、外れが少ないのがいいです。
どの果物やナッツを食べても、あ、これはダメなヤツだ・・・というのが無いのは、さすがだな、と。
結局、ここで色々食べたらお腹いっぱいに。
なんだかんだで、2時間半ぐらい、ここにいました。
お値段はちょっと張りますけど、お茶、雰囲気、接客などをみても、やっぱり外れのないお店だと思います。
湖畔居
住所:西湖区聖塘景区1号(圣塘景区1号)
続く。
明日は茶葉博物館と龍井に
西湖龍井茶葉市場は、市況を見るの良いところかなと思います。
ここに集まる龍井茶は、富陽と龍塢が多く、外観は良くても、内質は値段なりです。とはいえ、中国の一般家庭では、高級品扱いですね。
龍塢でも、高品質の龍井茶を作っていますので、品質の低いものは、市場に行くのでしょう。
富陽茶は、味が違うので、すぐに分かってしまいます。
この市場の包装紙や袋は、西湖龍井の印刷がされたものがほとんどで、富陽茶でも、店主は「えへへ」と言いながら、平気で西湖龍井の袋に入れてくれます。
arukichiさんの記事は、当たり障りがないように書かれていて、感心させられます。
islandrabitさんへ
補足のコメント、ありがとうございます。
高値で売れそうなものは手元に、量を捌く必要のある量産品は市場に・・・というのは、いずこも同じですね(^^;)
パッケージに関しては仰る通り、あんまり当てにならないですね。
西湖龍井の協会は大都市の小売店での摘発を強めているようですが、お膝元がこれでは・・・
一般消費者レベルの対策としては、信頼できるお店で買ってもらうしかないですね。
龍井の農家で売っているのは、全部嘘だから、町の高級茶を売っている店で買いなさい。と、何人かの識者に言われましたが、高級店は、高級店なりの価格となっており、びっくりする値段になっています。
というわけで、干してあるところから、製茶の終わりまでずっと見学して買いました。それでも、白タクの運転手から、摘むところから見ていたか、信用できんぞと、暖かい励ましを貰いました。
龍井あたりをうろうろしていると、たまたま、見張りをしているブローカーを見かけますね。
islandrabitさんへ
高級店で売っているのは、茶末や砕けた茶葉も掃除されていて、その分で1~2割のコストアップ。
さらに、原産地保護をしている協会への上納金やパッケージ、売り子さんの人件費に家賃・・・と色々乗りますからね。
それでも、小口で買えるので、その点では利用価値があるかな、と思います。
それにしても、凄い買い方をされましたね(^^;)
そこまで情熱を傾けられる方は、中国でもそうはいないと思います。
西湖龍井農家では、小売用には、回し篩を掛け、箕で粉落としをする所が多いです。なので、だいたい綺麗に上がっています。
ただし、まだ忙しくない早い時期だけかもしれません。問屋出荷用の半斤包だと荒茶ですね。
忙しい時は、ひたすら製茶しているので、いくつかの工程が省略されてしまいます。鍋炒り後の茶をそのまま買ってくると、当然仕上げ無しで、雑な内容になってしまいます。
龍井茶は、仕上げで抜ける量は、それほど多くないです。1割無いくらいでしょうか。