ようやく入れた!
バス停の終点まで行って、折り返してきました。
終点までは大体2km弱と、思っていたよりも距離が離れていませんでした。
茶文化展示館まで戻ってきたのは、13時少し前。
ちょっと早いかな~と思いつつも、様子を見に行くと・・・
ドアが開いていました!!
まだ、鍵を開けたばかりだったようで、館内は暗かったですが。
今、来たばかりという雰囲気の警備員の格好をしたお兄さんに「見学してもいい?」と聞いたところ、「いいよー。今、電気付けてくるねー」と快く対応いただきました。
こちら、入館料は無料。タダなんですね。
でも、中身はなかなか充実していて、九曲紅梅を知りたいなら、やっぱり見ておくべきかなと思いました。
1階は歴史と産地について
1階のフロアは主に歴史と当地についてです。
約200年ぐらいの歴史がある、九曲紅梅。
その始まりから、名を馳せた時期の資料や缶、ポスターなどの品々が展示されています。
九曲紅梅の蘊蓄には必ず出てくるように、太平天国の乱で南方から逃げ延びた方がこちらに住み着き、紅茶の製法を伝えたとされています。
現地に来てみると分かりますが、九曲紅梅の産地は、杭州とはいえ、山と山に囲まれた隔絶された場所。
交通の便も良くなかった、ということなので、確かにある程度の人がまとまって住み着くにはこういう場所しかなかったでしょう。既に住んでいる人たちを余所者が押しのけるわけにはいきませんので。
杭州市内でも九曲紅梅の存在感は比較的希薄なように感じられるのですが、それは産地がきわめて限定されているからかもしれません。
これは展示されていた九曲紅梅の生産マップです。
図に描かれているのは、双浦鎮を示しているようですが、その中でも緑の葉(産地を示す)があるところは左の方の山に挟まれた狭いエリアだけ。
杭州でお茶を生産している人たちにとっては、ほとんど関わりがないお茶なのです。
この限られた地域の人々しか、製法を知らないし、生産もしていない。
しかも、九曲紅梅を生産している村々は、西湖龍井茶の原産地保護範囲と重なっていることから、無名の九曲紅梅を作るよりは中国一のメジャーブランドの西湖龍井茶を作った方が、商売的には圧倒的に優位。
そのため、生産量は少なくならざるを得ず、細々作ったとしても、良い生葉は龍井に流れてしまうため、九曲紅梅の良茶ができにくい。
生産量が少なく、良茶も少ないとなれば、当然流通も少なくなり、ブランド力も上がらない。
生産者は、手間の割に価格面で報われないから、ますます生産に意欲が出ない・・・という悪循環に陥るわけです。
最近の中国で歴史的銘茶とブランド力の強いお茶の産地がかち合うと、起きがちな問題です(顧渚紫笋茶と安吉白茶とか)。
地元政府として、このような施設を作ったというのは、このような悪循環に対して、どうにか自分たちのオリジナリティーのあるお茶を守りたい、という意思表明であるようにも思えます。
1階には製茶のできる施設も
ここは九曲紅梅茶文化展示館ですが、九曲紅梅茶研究院という施設も併設されています。
九曲紅梅のお茶の研究を行うことになっているようで、製茶の機械や設備、発酵室なども揃っていました。
屋上には茶葉を干す場所も確保されているようで、ここを使って製茶作業をすることもあるようです。
2階は製法と産業のフロア
2階にあがると、お茶の製法を紹介しているコーナーになります。
個人的に一番見たかったのは、ここなんですね。
九曲紅梅は、小葉種を使って作る紅茶です。
日本で作っている国産紅茶、特にやぶきたなどの緑茶品種を使って作るものには、特有の香り・味があります。
アレが私、苦手でして。最初は品種によるものか?と思っていたんですが、べにふうきなどの紅茶品種を使っても、同じようなトーンの香りがあります。
日本時代の製法を引き継いで作っている台湾の紅茶からも同じようなトーンを感じることもあります。
しかし、九曲紅梅は、小葉種なのにあまりそれが感じられません。
製法上で何か違いがあるのではないか?と思い、そのヒントを知りたいな、と。
こちらでは、製茶機械の展示の他、各製造プロセスについて、詳しく紹介しています。
紅茶の製法は、簡単に書けば、萎凋→揉捻→発酵→乾燥です。
消費者が覚えるのであれば、これくらいが精一杯でしょうが、これ、料理にたとえれば「切って」「炒めて」「煮込む」ぐらいの説明でしかありません。
実際に生産しようとすれば細かな様々な工程があり、それをキチンとこなさなければなりません。
それぞれの工程でお茶の成分が化学的あるいは物理的に変化し、お茶の香りや味に反映されます。
「全発酵させれば紅茶でしょ」ぐらいの認識では紅茶は作れません。紅茶の出来損ないができるだけです。
ここでは、一般的な書籍では端折られそうな、細かな工程が記されています。
もちろん工程は記されていても、細かな加減というのは分かりません。
ただ、ある程度のお茶に関する見識を有する方が、各工程でどのような変化が茶葉に起きているか?を想像しながら読み解けば、「なるほど!」と思うことは多いでしょう。
知りたい人はここに来るべきなので、敢えて詳しく書くことはしませんが、九曲紅梅の製法は、かなりクラシックな製法だな、と思いました。
全面的な機械生産に移行するのはかなり難しそうな、そんな印象を受けました。
まさに”工夫紅茶”です。
考えてみれば、当時の武夷山などの南方で作られていた紅茶の製法を、太平天国の乱で逃げてきた人たちが、この地に持ち込んだわけです。
この杭州という土地は、周りで紅茶をつくるような地域ではなく、製法の交流が途絶えていたはず。
とすれば、当時の製造技法かその正常進化バージョンがそのまま残されている可能性が高いんですね。
武夷山でも残っていないかもしれないような、古い製法の伝統が受け継がれているのかもしれません。
個人的には大変勉強になりました。大収穫です。
開いてて良かったです(^^)
やっぱり、田舎では中国語が必要かと
帰りがけに、先程、電気を付けてくれたお兄さんが、私が九曲紅梅の紙袋をぶら下げているのを見て、「いくらのを買ったの?」と聞いてきました。
お値段を答えると、「んー、もっといいのも、あるはずだよ。今度来たときはそういうのも飲んでみなよ」とのこと。
田舎に行くと、こういう他愛もない質問を、色々されることが結構あります。
これ、ある程度、的確に答えることが、「私は怪しいものではありません」という表明になります。
あちこちをうろうろしたり、覗き込んだり。観光客って、下手をすると不審者に見えますからね。
そうではないことを会話などで、上手く伝えられないと、地元の方に余計な心配をかけてしまいます。
特に田舎の方は、外国人に慣れていない人も多いので、こちらの意図を汲んでくれず、思いもよらないトラブルになる可能性もあります。
少なくとも、相手が何を言っているのか(怒っている、止めてくれと言っているなど)は聞き取れて、自分は何をしたいのか、ぐらいは伝えられた方が安心ではないかと思います。
それに、ここの場合、中国語をしゃべれないと、おそらくお茶を買えないと思います。
龍井村なら外国人かどうかは関係なく、もれなく営業してきて、売りつけようとしますけど(笑)
割と来やすい場所ですが、言葉に自信のない方は、どなたか言葉のできるお仲間を見つけるか、ガイドさんに案内してもらうかすることをお薦めしておきます。
※このブログを見て行ったけど、トラブルに巻き込まれたじゃないか、と言われても困りますので。中国と台湾の田舎は違います。
帰りは1つ手前の馮家からバスに
さて、それでは市内に帰ることにしましょう。
バス停でバスの時刻を見ますと・・・
あ、行ったばかりでしたね。。。
283というバスもあるじゃん、と思ったのですが、これの運行時間は早朝のみのようです。
やはり、ここは510のみの場所と考えた方が良さそうですね。
バス停には九曲紅梅の製法を記したものもありました。
これ、分かりやすくコンパクトにまとまっています。
萎凋の前にやることがあること、お日さまの力を借りるお茶であることが、分かると思います。
ここでボーッと待っているのも何なので、村の入口にある”江南生態茶村”の門を見に行くことにしました。
1つ先のバス停「馮家」の近くにあるはずです。
トコトコと、のどかな道を歩いて行きます。
途中、明らかにこのへんの人ではない、数名の女性たちに会いました。
おそらく、茶摘みのために来た出稼ぎの人たちだと思います。
ある程度大規模にやっているところは、摘み手さんを呼んでくるんでしょうね。
馮家のバス停を過ぎ、少し先に行ったところにこちらの門があります。
農薬などを使わずに生態系を活かして作る、お茶の村、ほどの意味です。
西湖龍井の産地の中でも、何らかの個性を出していかないと生き残れないという意識はあるのだろうと思います。
産地の中でも競争はあるんですよね。
さて、これで村のメインストリートは一通り、見たことになるでしょうか。
最初は展示館が開いてなくて、どうなることかと思いましたが、やりたかったミッションは全てクリアできました。
バスに乗って、街の方へ戻りたいと思います。
続く。
九曲紅梅を知るには訪問したい村です
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