沼津の駅前から伸びる仲見世商店街。
アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の聖地としても有名です。
その通りに面した場所に、武夷山のガチすぎる生産者(茶葉工場)の直売店があります。
皇御茗(こうごめい)茶葉さんです。
武夷山の正岩茶区に茶畑を持つ工場
皇御茗茶葉という会社の名前をご存じの方は、あまりいないと思います。
中国でも福州と厦門に直営店があるくらいで、生産と卸売りの方を重視している会社です。
しかし、私は知っていました。この会社は「ガチ」だということを。
なぜなら、武夷山の正岩茶区(特に慧苑坑周辺)を歩いていると、メチャクチャ看板を沢山見かけたからです。
品種の名前が書いてあったんで分かりやすかったんですよね。
で、写真をバッチリ撮っていたという。それで会社の名前を記憶していたわけですね。
※これらの看板は、今は政策が変わったので、撤去されています。残念。
同社のWebサイトによると武夷山の風景区内(大紅袍風景区内)に120,000㎡(36,300坪)の茶園を保有しているとのことです。
これ、とんでもなくスゴイことなんですよ。
まず、武夷山風景区、それも大紅袍風景区のあたりというのは、いわゆる”三坑両澗”と呼ばれる地域です。
そして、武夷山広しといえども正岩茶が採れるのは猫の額ほどしかない、ここしかありません。
ワインでいうところの”グラン・クリュ”に該当する場所です。
で、この地域は世界遺産に指定されているので、もはや開発ができません。
中国の場合は土地は国有なので、耕作権というのを得るのですが、この前、この地域の耕作権がオークションになったんですけど、その価格はこんな感じ。
89,000㎡を10年借りるのに、7400万元(約11億5千万円!)です。
で、この会社が保有している茶園は、それより31,000㎡多いのです。
・・・・・・ヤバくないですか、これ。
その会社のお店が、日本にお店をオープンしていたというのを、ネットで見つけまして。
しかも、なぜか沼津に。なぜ・・・・・・
その理由を探るために、我々はアマゾンの奥地沼津へ向かったわけです。
※武夷岩茶の詳しい説明は、こちらでお読みください。
コロナの影響で予約制に
お店は、若い中国人のご夫婦で経営されています。工場の社長のご親戚の方です。
「日本に住むのであれば、うちのお茶売ってみるか?」ということになったそうです。中国や台湾の茶業者あるあるです。
それに加えて、日本人の方がお手伝いスタッフ的に入っていることもあります(Webだったり日本の商売のやり方などをアドバイスされているそうです)。
オーナーさんは日本語が流暢なのですが、やはり日本で商売するとなると、こういう方がいるのは心強いでしょう。
上記のように、知っている人からすれば、ヤバいぐらいに良いお茶が買えるお店なのですが、日本では、ことに沼津では知名度がありません。
試飲なども行って認知度向上に努めていたようですが、茶葉販売だけでは・・・ということで、近年流行りのタピオカミルクティーを出してみたり(正岩茶の崩れた粉末で作っていたそうです。贅沢すぎる・・・)、串焼きなどをテイクアウトできるようにしていたようです(店頭の看板で「?」と思った)。
オーナーさんご夫婦もお好きなようなので、『ラブライブ!サンシャイン!!』のファンの方だったり、中国人観光客の方などが結構いらしていたみたいで。
が、コロナの影響で、この手の営業が難しくなっています。
そこで、完全予約制で茶葉販売を行うことに、最近力を入れ始めたそうです。
茶葉のサンプリング配布などをSNSで募集してみたり、認知度の向上を色々図っていたそうです。
そのタイミングで、私がたまたま訪問したわけです。
三坑両澗のその先を選べる店
当初は手頃なお茶から始めて、徐々に正岩茶かなぁ・・・と思っていました。
が、その計画はすぐに挫折しました。
というのも、この会社、茶畑を正岩茶区にしか持っていないんだそうです。
しかも、製茶するのも、その正岩のお茶しか製茶をしていないという。。。
量じゃなくて、品質を追うのがモットーの会社だそうです。
普通は周辺からかき集めて、安いものから高いものまでラインナップ揃えるんですけど、それをしない会社でした
一応、ラインナップには半岩茶というものもあるのですが、それすらも風景区内の茶葉だという・・・
普通のお店だと、洲茶から始まって、最高グレードが正岩茶で終了なんですけどね。
ここはスタートが正岩茶という、ちょっと信じられないお店です。
そして、ここからがさらに凄いところで、正岩茶が正岩茶で終われないのです。
さらに詳細な茶園の場所を指定してくるのです。
おそらく日本で岩茶に詳しい人でも、武夷山の正岩茶区の茶園といえば、”三坑両澗(牛欄坑、慧苑坑、倒水坑、流香澗、悟源澗)”と竹窠、九龍窠、それに加えて馬頭岩、猫耳石などが出てくるぐらいでしょう。
が、こちらでは慧苑坑(けいえんこう)の中のさらに細かな区画の茶園を冠した商品になっています。
たとえば、慧苑坑水仙といえば、この会社ではベースグレードであって、より高いグレードのものは、もっと細かな茶園を指定した楓樹窠(ほうじゅか)、古井(こい)の方がグレードが高い、という構成になっています。さらに隣の竹窠(ちくか)の扱いもあるのですが、その中の小区画である観窠(かんか)水仙は、竹窠水仙よりグレードが上、という具合です。
私でも、ここまで細かくなるとお手上げなので「地図にしてください!」と言ったら、Twitterでまとめてくださったので、ご紹介します。
皇御茗の水仙地図
皇御茗では、慧苑坑、观窠、楓樹窠、古井の4グレードを取り扱っております。 pic.twitter.com/YoJ2DMm7G4
— 核心正岩茶専門店 皇御茗茶葉(こうごめいちゃば) (@hymtea) September 12, 2020
正岩茶という括りだけではなくて、ここまで詳細な茶園ごとのラインナップから茶葉を選ぶというのは、現地でも難しいです。
それなのに、このような買い方が、まさか日本、それも沼津でできるとは・・・
現地に行くより、遙かにピンポイントで買い物ができます。
焙煎は軽めで透明度重視の仕上げ
武夷岩茶は、生葉の産地(小気候)が品質に大きく影響を与えますが、もう一つ、製法によっても味わいと香りが違います。
岩茶は焙煎程度で好みが分かれることも多いので、このあたりは試飲したりお試しパックを買ったりして、試してみたいところです。
こちらの工場の品質的な特徴は、焙煎が軽めで、茶葉自体の品種と発酵の香りを重視しており、かつ透明感のあるお茶に仕立てられています。
「ゴリッとした焙煎をし、ガツンと来るお茶こそが武夷岩茶だろう」と考える向きには少し弱く感じられるかもしれません。
が、品種自体が持つ花のような香りや発酵による果物のような香りを感じやすい仕上げなので、今までの武夷岩茶がキツいと感じられていた方には、とても合うと思います。
透明感がある仕上げなので、品種的に言うと奇丹(純種大紅袍)や水金亀のようなお茶は得意なんだろうなあ、という造りです。
たとえば、水仙などはうまみだけではなく、水仙自体の花のような香りを湛えている仕上げなので、水仙の香り高い一面も知ることができます。
少量のお試しパックも
機会があれば、沼津の店舗でじっくりと試飲し、説明を受けながら購入したいところです。
が、この御時世ということもありますので、難しい・・・という場合は、ネットショップで購入することも可能です。
今のところ、ネットショップに上がっているのは、正岩茶の中でもフラッグシップ的な茶葉が多く、ちょっと高級すぎると感じられるかもしれません。
正岩茶、なにしろ土地使用権が高いので、お値段は結構します(焙煎で崩れ葉が多く出るので、生葉の量が普通の烏龍茶の倍必要という事情もあります)。
現時点ではネットショップに上がっていないのですが、「武夷三昧」という一級茶葉(このお店にしてはお手ごろ)が3種類入ったセットがあるので、このセットとワンランク上のお茶をいくつか取り寄せることができると、お店の傾向は分かるかな、と思います。
ネットショップには一部の商品しか上がっていないので、問い合わせてみると良いかもしれません。
いずれにしても「日本でこんな買い方ができるとは!」というラインナップが揃うお店なので、岩茶ファンの方は、ぜひチェックしてみてください。
皇御茗茶葉(こうごめいちゃば)
住所:静岡県沼津市大手町5-7-5 つるかめ仲見世ビル103
電話:090-9294-2333
営業:13:30~21:00(※感染症流行期間中は予約制の営業)
定休:水曜日
Web:http://huangyuming.jp/
Shop:https://huangyum.shopselect.net/
Twitter:https://twitter.com/hymtea
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