さて、それでは早速、お目当ての九曲紅梅茶文化展示館に行ってみましょう。
まさかの開いてないパターン・・・
通りに面した入口のところには「九曲紅梅」と書かれた石碑が。
この展示館のオープンの際に作ったのでしょうね。真新しいです。
で、こちらが展示館の入口なのですが、どうも様子が変です。
中は真っ暗。鍵も閉まっています。
開いてない・・・(-_-;)
まさかの定休日か?それともオープン時間前か?と思ったのですが・・・
開館時間:9:30-16:00
毎週月曜と春節期間は休館
とあります。
現在、土曜日の11:30なんですが。。。
さすがに、ちょっと途方に暮れます。
ここまで来て、まさか中を見られないとは。
まあ、中国らしいといえば、中国らしい。
お茶を売っていそうなところを探す
しかし、手ぶらで帰るわけにはいかないので、「ひょっとしたら午後から開くかもしれない」という望みに賭けることにします。
それまで、近隣を散策して時間を潰しつつ、お茶を買えそうならお茶を買いましょう。
バス停のところにあったイラストマップを見てみます。
ところどころに「食」とか「茶」とかの幟が立っているところがあります。
このへんが観光客向けの農家菜(農家レストラン)とか茶の販売をやっているのではないか、と思いました。
ただ、街の雰囲気的にレストランは、大人数向けの料理ばかりのような気がします。
イラストマップなので、デフォルメされている可能性もあり、縮尺が分からないのがちょっと怖いのですが、通り沿いに茶畑もありそうです。
2時間ぐらいなら、時間はどうにか潰せそうかな・・・と思いました。
さて、まずはどこへ行きましょうか。
博物館の向かい側、川の反対側にお茶の工場らしき建物がありました。
橋のところには、こんな看板も。
お茶の販売のほか、お茶を飲むこともできそうな感じですね。
でも、ちょっと覗いてみたのですが、大きな会社のようで。
なんだか入りにくかったので、その会社の周りにある小さなお店を覗いてみました。
これらのところにも、「西湖龍井」とか「九曲紅梅」などの看板が出ていましたので。
ただ、営業しているのかしていないのか、ちょっと良く分からない感じです。
日本の田舎でもよくありがちな自宅兼用の商店。何でも屋さんという感じの雰囲気。
店員さんが店の方に居るわけでも無く、自宅の方にいるのを大声出して呼ぶ的なスタイルのようです。
偶然、九曲紅梅製造技術伝承人に会う
うーん、これは入りにくいな・・・
と躊躇していると、第一村人発見!
少し先の方にあるお店の前で、おじいさんがホウキを持って、掃除していました。
その姿を見て、「あ、この人、お茶を作ってそうだな」という勘が、なんとなく働きました。
茶工場の掃除は茶づくりの基本。その雰囲気があったんですね。
そこで、「お茶買いたいんですけど。紅茶。九曲紅梅、ありますか?」と聞いてみます。
最初は杭州訛りがきつくて、聞き取れず。
「ん?」という感じだったのですが、意図がようやく通じたようで、「あるある。入って、入って」と案内されます。
「どういうのが良いのか?」と聞かれたので、「ちょっといいやつ」と回答。
分かったと、お店の中においてあった箱から、茶葉をひとつかみ取り出してきました。
これをグラスに入れて、お湯を差してくれます。紅茶でもグラスなんだ、と妙に感心。
それでも、かなり良い香りが立ちのぼります。
このおじいさん、「俺は2人しかいない、九曲紅梅伝承人だ」と言います。
だから俺のお茶は美味いぞ、と。
伝承人ってのは、武夷山などでもある、”製造技術代表性伝承人”というやつですね(この方の場合は、”九曲红梅茶制作技艺的代表性传承人”)。
杭州市の無形文化遺産になっているそうです。
つまり、この方、人間国宝というか、人間”杭州市”宝です。
何の先入観もなく入ったお店で、初対面でいきなり、こんな話だったので、「凄いことを吹くなー」と思ったのですが、どうやら事実みたい。
証書もありましたし。
で、お茶を飲んでみたら、とても甘い香りで余韻もあり、美味しいのです。
これこそ、探していた九曲紅梅!と思いました。
いや、本当に凄い茶農家さんだったんじゃない?と、ここで改めて居住まいを正しました(←失礼)。
以前、龍井43号で作ったものと老茶樹(いわゆる在来種。このへんのは鳩坑種か)のものを購入して飲み比べたことがあったので、この味はひょっとして老茶樹のものでは無いか、と思いました。
そこで、「これは老茶樹?」と聞いてみたところ、おお、お前は老茶樹が分かるか!と上機嫌に。
正統な九曲紅梅というのは、老茶樹で作るものだ。龍井43号で作ったものは味が違う。
俺は商売人じゃないから良いお茶を作ることにしか興味が無い。
他の若い者は、商売のために春先は龍井(※)を作って、そのあとのお茶で九曲紅梅を作るが、それでは美味しくならない。
そのようなことでは、九曲紅梅の本当の魅力が伝わらない・・・など、製茶論を展開。
※龍井茶の方がネームバリューが高く、高値で販売できるため。この村は西湖龍井の二級保護区になっているので、西湖龍井としての出荷が可能。ただ、買い取りの値段は獅峰や梅家塢などの一級保護区産に比べると安くなる。それでも手間のかかる九曲紅梅よりはずっと高い値段で売れる。
このような話を聞いていると、話がいちいち的確です。
「この人、フロックじゃ無く、本当の名人だったんだ・・・」と思いました。
なんか知りませんが、凄い人を引き当ててしまったようです。
ここまでのアンラッキー(飛行機飛ばない、バス酔い、博物館開いてないetc…)は、このための布石か?と思うぐらい(笑)。
淹れてもらったお茶は、半分ぐらい飲んだところで、お湯をさらに差してもらうと、さらに香りが伸びるのです。
「おおっ!」と驚くと、おじいさん、「これが正統の九曲紅梅だ」とニヤリ。
バス酔いして、あんまり調子が良くなかったのですが、こちらでお茶を飲んだら、すっかり回復しました。
私は、美味いお茶を飲めば、調子が良くなるようです。単純ですw
ここで飲んだお茶の余韻は、杭州市内に戻るまで、ずっと口の中に残っていました。
少し分けてもらおうと、お値段を聞くと(他の有名なお茶に比べれば)かなりリーズナブルなお値段。
そこで、1斤を購入することに。
たぶん、このお茶は、飛び込みできた人用のもので、もっと美味しいのは他にあるはずです。
しかし、そういうのを売ってもらえるようになるには、それなりにこちらに通わないといけないでしょうね。
良いお茶を作る茶農家さんって、売る相手を選ぶものなので、認めてもらえないと売ってもらえません。
お礼を言って、お店を後にしました。
これは、また来たい!と思う農家さんでした。
(後日談:実はこの人のお茶を既に飲んでいた)
お店を後にしてから、なんだか引っかかることがありました。
「このおじいさんのお茶、以前どこかで飲んでいたんじゃないか・・・」と思ったのです。
味を覚えているというか、なんというか、既視感があったんですね。
で、現地にいる間に心当たりを検索してみると・・・
まさにその通りであったことが分かりました。
文中で、「在来と43号の両方を飲み比べた」と書きましたが、それはこの人のお茶だったんです。
紹介してもらったわけでもなく、そもそも、名前すら覚えていなかったのに、現地で偶然行き着いてしまったという(^^;)
博物館が開いていたり、もうちょっとタイミングがずれていたら、お店の前で掃除していることもなく、このお店に入ろうとも思わなかったでしょう。
出会えたのは、もう「茶縁」としか言いようがありません。
続く。
まさかの遭遇でした(^^;)
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