12月18日(火)に放送されました、TBSテレビ『マツコの知らない世界』。
毎回、ちょっとマニアックな「世界」をその道のツウの方が紹介し、それにマツコ・デラックスさんが、ツッコミを入れながら話を聞いていく番組です。
今回は、女優の風吹ジュンさんが登場し、「中国茶の世界」について語りました。
お茶好きのみなさん、ご覧になったでしょうか?
まだの方は、民放公式テレビポータルサイト「TVer」にて。無料で配信中です。
TVerでは、1月8日(火)20時56分まで配信されているそうですので、見てない方は是非。
番組の最初の30分ぐらいが「中国茶の世界」です。
見た方も、もう一度見ると新しい発見があるかもしれませんよ~
※私は既に3回見ました(笑)
テレビでお茶が紹介される番組というのは、たまにあるのですが、あんまりピンと来るのは少ないんですよね・・・
今回は限られた時間の中で、さらにテレビ的な”お約束”も含みつつ・・・でしたが、とても上手に魅力が紹介されていたと思います。
とはいえ、中国茶ファンから見ると、「少し補足しておいた方が良いかも~」なところがあるので、番組の流れを追いながら、ご紹介したいと思います。
Twitterのお茶好きさんの反応なども適宜織り交ぜてみます。
なお、思いっきりネタバレをしているので、新鮮な気持ちで見たい方は、先に番組を見てからにしてくださいね~
オープニング
今回がマツコさんと風吹さんの初共演ということでしたが、最初から軽妙なやり取りがありました。
そして、「見ていただきたいものがある・・・」ということで、出てきたのは、『月曜から夜ふかし』でおなじみの前説芸人・浜ロンさん。
チャンネル間違えたかと思いました(^^;)
まさかとは思いましたが、風吹さん本人の前で「例のネタ」を披露。
かなり戸惑っている空気が流れていましたが、、、無事に「公認ネタ」になりました。
もっとも、このネタでドッカンドッカン受けるイメージは・・・無いですねw
茶棚はガチ!
風吹さんにとっての中国茶は、
人生の色々を洗い流してくれたもの
とのこと。
この実に意味深な風吹さんの言葉に、「ご自分でぶっこみましたね~」とマツコさん。
観ている方も、色々想像してしまいますよねw
そして、ご自宅の茶棚を公開。
「生まれて初めて撮りました」とおっしゃっていましたが、その茶棚の品揃えは視聴者の想像以上だったような・・・
整然とお茶の缶が並ぶ茶棚は大きめのお茶の缶が3本入る奥行きがあるのですが、そのうちの上2段にはビッシリと中国茶。
岩茶や東方美人の缶がズラッと並んでいるのは壮観でした。
3段目、4段目には紅茶やハーブティーが並んでいたのですが、私は岩茶の大きな袋があったのを見逃しませんでした。
きっと、上2段に収めるルールにしていたのに、ちょっとはみ出てしまったのでは・・・と妄想しました(笑)
一番下の5段目にも大きなお茶の缶がありましたので、おそらく、複数のお茶が入っているのでは無いかと。
多分、自己申告以上に多くのお茶をお持ちだと思います(お茶マニアは、自分のお茶の保有量を過小に申告する傾向がありますw)。
さらに、茶棚の引き出しにはたくさんの急須や蓋碗、茶杯がズラリと。
お茶好きのキャリアの長さを物語っている茶棚で、Twitterのお茶好きさんの間では、一気に親近感を覚えた方もいたようです。
51歳から中国茶に出会う
このあと、風吹さんが自分でプロフィールのボードを出して、経歴の説明を。
50歳で子育てを卒業し、自分の人生を見つめ直すと決めたそうです。
そして、51歳の時に近所の中国茶専門店で、中国茶に出会ったとのことです。
この中国茶専門店というのが、今古茶藉さんです。
ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)で、簡さんのお茶 という名前で販売していたので、ご存じの方もいるかも。
※なお、山梨で茶館をオープンするため、2018年12月で東京のお店を閉め、移転準備に入っています(2019年8月オープン予定)。
風吹さんは、そこで買ったお茶のラベルに、生産日や産地の細かな名前が書かれていることを不思議に思ったそうです。
尋ねてみると、中国の山に直接買いに行っていることが分かり、「私も行ってみたい」ということで中国の茶畑巡りの旅が始まったそうです。
まず最初に出かけたのが、雲南省(哀牢山)。
樹齢2700年の木を見に行こうと出かけたのですが、悪天候のため辿り着けなかったそうです。
※番組では、東京・吉祥寺の中国茶専門店である 青蛾茶房さん 提供の写真で紹介されていました。
梅家塢龍井
風吹さんはこれまでに21箇所の産地を巡ったそうです。
その中で出会った中国茶を旅のエピソードとともにご紹介していく、というコーナーでした。
中国の某有名茶館のオーナーさんと一緒に写っている写真も紹介されていました(←目ざとい)。
セットの後ろにある茶棚は、中国茶専門店風。
これを見て、マツコさんが「これがハードルが高くなるのよ。怖くて、あれ出してとか言えないのよ~」と、ごもっともな感想を。
それを受けて、風吹さんが「一見そうなんですが、でも今日は本当に簡単に楽しくいただけるものだということを分かっていただきたい」というお話をしました。
この言葉にある通り、「中国茶は簡単に楽しく飲めるものなんです」というのが、今回の一番の主張になっていたように感じます。
梅家塢という産地
そして、最初に”仕事のストレスを洗い流すお茶”として紹介されたのが、浙江省杭州市の 梅家塢龍井(めいじゃーうーろんじん)。
Twitterでは、「西湖じゃなくて梅家塢かよ・・・」という声が上がっていました。
これ、中国茶マニアしか分からない話なので、補足します。
まず、龍井茶(ろんじんちゃ)というのが、大きなお茶の銘柄の名前です。
その中で、特に有名な産地として知られるのが、杭州市西湖区(さいこく)という地域。
これが番組の中で風吹さんが紹介されていた、「東京都ぐらいの広さのところで~」という話です。
ここで作られるお茶を西湖龍井茶(さいころんじんちゃ)と言います。中国でも超高級茶として知られるお茶です。
分かりやすくたとえると、龍井茶ってのが「コシヒカリ」で、西湖龍井茶が「南魚沼産コシヒカリ」みたいなイメージです。
そこからさらに梅家塢(めいじゃーうー)という、集落名まで指定してきたので、お茶好きさんがザワついたわけです。
最高級茶の中の最高級産地を指定するって、どういう話だよ、と。
そういえば、その杭州市は、上海から飛行機で1時間という紹介がありました。これも補足が必要です。
直線距離で200kmほどであり、今は高速鉄道が開通したので、飛行機は廃止されてます。
が、風吹さんが旅をされた頃は飛行機も飛んでたんですね。
飛行機は近い距離でも離陸着陸でそれなりに時間が取られるので、搭乗時間は1時間ぐらいだったのだと思います。
グラスでお茶を飲む
早速お茶を飲む訳なんですが、中国茶というと、いろんな道具や茶器を使って淹れるというイメージがあるかもしれません。
しかし、風吹さんが取り出したのは、グラス。
番組では、「中国の茶農家では、みんな茶葉をグラスに直接入れて飲むんです」と紹介していました。
これ、ホントです。
産地では、みんなこんな感じで飲んでます。
グラスの秘密
風吹さんは、ご自身の茶器という細長いグラスを用意していました。
細長いグラスの方が香りを感じやすい、という説明も。
みなさん、あのグラスに気づきました?
あれ、バカラのグラスですよ。
多分、これだと思います。
さすが良いものをご存じだと思います。
そしてお茶をグラスに入れていくのですが、一つ気になるところが。
日本茶の緑茶は茶葉を刻むとありましたが、これは言い間違いだと思います。
正確には、「日本の緑茶は、きつく揉み込んであるので、味が出やすい=渋みも出やすい」ということでは無いかな、と。
それとの比較で、中国緑茶は高温で入れても苦みが出にくい、ということです。
独特の方法で高級茶を気軽に楽しむ
最初は、お湯をほんの僅かに入れて、それで飲んでいました。
これは今古茶藉さんの独特の方法で、少量ずつお茶とお湯を馴染ませるのが目的です。
そのあと、お湯を徐々に増やしていきます。
こうすると、少量の茶葉の量でも、しっかりと味わうことができるのです。
お値段が10gで6480円と、かなりのお値段のする茶葉なのですが、実際にこの飲み方で使う茶葉の量は0.5gぐらい。
そう考えると、10gは20回分なので、1回当たりの茶葉のお値段は324円です。
これで差し湯をしながら飲めば、半日は飲んでいられると考えると・・・
お値段の額面だけ見るとビックリしてしまいますけど、意外に手の届く贅沢のような気がします。
※今古茶藉さんは、そういう飲み方を提案しているお店です。
ストレスを洗い流す?
このお茶は”ストレスを洗い流す”と紹介されていました。
これには理由があって、高級な緑茶には旨み成分の1つである、「テアニン」という物質が多く含まれています。
この「テアニン」という物質は、摂取すると脳のリラックス状態を示すα波が検出されるとのことで、リラックス効果があるとしてサプリメントなども作られています。
そう考えると、一応はストレスに効果的?なのかもしれません。
テアニンは高級な緑茶に多く含まれるので、ある程度、良いお茶でないと効果は無さそうです。
なお、今古茶藉さんの梅家塢龍井は完売のようです。残念。
代わりとなると、このあたりのお茶が良いかもしれません。
便利な茶器、タンブラー
持ち運びにも便利な茶器として、風吹さんデザインのタンブラーも紹介されていました。
マツコさんと軽妙に掛け合いながらの商品紹介がすごく魅力的でした。
このコンビで通販番組をやったら、かなり売れるのではないか・・・と思ってしまいました(^^;)
こちらも今古茶藉さんの在庫は無くなってしまったようです。1月に再販するかも、とのこと。
風吹さんデザインではないのですが、同じような機能を持つものもありますので、ご興味のある方はどうぞ。
鳳凰単欉
2番目のお茶は、広東省潮州市の鳳凰単欉(ほうおうたんそう)でした。
”イライラを洗い流す烏龍茶”という紹介をされました。
風吹さんがお茶を淹れるシーンは、だいぶカットされていたのですが、最初に蓋付きのお碗(蓋碗・がいわん)にお湯を入れ、器を温めていたようです。
温めに使ったお湯は竹でできた茶盤(ちゃばん)の上にこぼして捨てていたようです(濡れていたので)。
茶盤は下が空洞になっていて、お湯がたまるようになっています。
机の上を水(お湯)浸しにせず、お茶を入れるのに重宝します。
また、普通は「茶海(ちゃかい)」という、ミルクピッチャーのようなものに淹れたお茶を移すのですが、ここでは同じサイズの蓋碗のお碗の部分に空けていました。
このやり方も、今古茶藉さん独特のやり方なので、風吹さんはそのやり方でいつも淹れているんだろうなぁと思いました。
茶葉もちょっと少なめでサラッと淹れる、今古茶藉さんスタイルです。
淹れた後の蓋には残り香が強く残るので、マツコさんがずっと嗅いでいました。
ここには非常に甘い香りが残り、さらに時間とともに香りが変化していきます。
アロマの効果はあると思うので、確かにイライラは洗い流せるのかも?と思います。
こちらはまだ今古茶藉さんのお茶の在庫があるようです。
ちなみに、今古茶藉さんの「3番」というのは、比較的お手ごろな部類のお茶です。
もっと高級なのも色々あります。
今は山梨へ移転準備中なので、ネットショップでも取り扱いが無いようですが、復活したら是非試してみてください。
鳳凰単欉は、さまざまな香りを持つ品種がたくさんあります。
他のお店も含めて、試してみると面白いと思います。
鳳凰単欉入りボンボンショコラとガレット
ここでお菓子が登場します。
風吹さんのいとこのお婿さんがパティシエさんだそうで、特別に作ってもらったものだそうです。
お店は滋賀県守山市にある ドゥブルベ・ボレロさん。
紹介されていた商品は、ガレット・デ・ロア テ・シノワ。
テ・シノワというのは、中国の茶ということですね。
鳳凰単欉を粉末にして、ガレット・デ・ロワの生地に混ぜ込み、アクセントに黒豆をいれたものだそうです。
期間限定で、守山の本店でのみ。12月28日(金)~1月6日(日)の発売だそうです。
もう一つのボンボン・ショコラ・テ・シノワ。
鳳凰単欉を生クリームで煮出し、茶葉をウォッカに漬け込んで香りを移したものを混ぜているそうです。
こちらについては、本店、大阪本町店、ネットショップで発売しています。
1月22日からのサロン・デュ・ショコラ東京でも販売するらしいですよ。
中国茶の基本的な項目について
ここで、風吹さんより中国茶の基本的な項目についてレクチャーが。
まず、中国茶は全体で2000種類以上ありますが、分類さえあれば意外に簡単、というお話がありました。
緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶、黒茶という分類で紹介されていました。
※なお、2014年以降、中国では国が「青茶」を「烏龍茶」と呼ぶことにしています。
さらに、20煎も楽しめるという話や、茶殻をお風呂に入れたり、佃煮にすることもできますという紹介も。
テレビなので、一方的に中国茶の話をまくし立てることはできません(それは放送事故です)。
さまざまな掛け合いや脱線(浜ロンさんも一種の脱線)をしながらなので、その僅かな時間に少しでも触れられたのは良かったのではないか、と思います。
テレビで何かをきちんと伝えるのは、本当に難しいことなんだなぁと改めて思いました。
千年紅茶
そして最後のお茶が、雲南省臨滄市(りんそうし)鳳慶県(ほうけいけん)で作られる千年紅茶というものでした。
千年紅茶というのは、今古茶藉さんのオリジナルの名前です。
一般的に雲南紅茶と呼ばれるもののうち、芽の部分だけを使って作られたものです。
この紅茶の特別なところは、その収穫した木の大体の樹齢が千年ぐらいと推測される木、1本から採れた葉っぱだけを使っていることです。
雲南省というのは、お茶の原産地に近いところで、冒頭の話にもあったように樹齢2700年というようなお茶の大木があるところです。
そのような大木は数に限りがあり、基本的には貴重な木として保護の対象になっています。
そういう背景から、誰でも飲むことができるわけではない。特別な地位にある人だけが飲める、という紹介の仕方になったのだろうと思います。
ここでは今古茶藉の簡さんが登場してお茶を淹れていました。
10g8640円という、かなり高額なお茶ということもあり、数枚の茶葉(おそらく0.5gも無い)を入れていました。
小さなグラスに少しずつお湯を注いで、1煎、2煎、3煎と少しずつ積み重ねていくように飲んでいき、香りや味の違いを見ていくというものでした。
このお茶はかなり特殊なお茶ですが、中国の紅茶はいずれも渋みが少なく、砂糖を入れなくても甘みを強く感じるものが多いです。
特に雲南紅茶については、やや柑橘のような香りも感じられることがあり、なかなか面白い種類の紅茶だと思います。
千年までは行きませんが、同じようなタイプの雲南紅茶は比較的お手ごろです。
と、「中国茶の世界」はここでプツッとという形で切れるように終了しました。
まだまだ、続いて欲しかったです・・・
結論:中国茶は気軽に飲める
少し丁寧に見てきましたが、かなり色々なことが紹介されていたことが分かるのではないでしょうか。
今回、風吹さんがとにかくお伝えしようとしていたのは、「気軽に飲める」「難しくない」ということでした。
普通に中国茶を紹介するのであれば、テレビ的に映えるよう、華やかなしつらえをした茶席というものを作ったり、流麗な茶芸というものを披露したりしてしまいがちです。
しかし、そのようなものを見せてしまうと、初めての方にとっては、ますます縁遠いものに感じてしまうことでしょう。
そのようなことを配慮してか、今回、風吹さんは最小限の道具で、しかも「○分待ちます」のような時間を計ることもなく、お茶を淹れて、味わって見せていました。
多分、そのことが伝われば、今回の番組はとても良かったのではないかと思います。
ネットでの反応を見ていると、お茶の価格が高いことに驚きの声が上がっていました。
日本のお茶の場合は、今や機械で摘むことが多くなっているので、人件費がだいぶ抑えられています。
ゆえに、日本では100g1000円以上は高級茶、というイメージが定着しています。
しかし、今回紹介されたような中国茶は、全て人の手で、1つ1つの小さな芽を摘んで製茶しています。
人件費のカタマリのようなお茶ばかりなので、その人たちの1日摘める量と生活していけるだけの給与を・・・と考えると、高いというよりは「フェアプライス」というのが、本当のところです。
そういう世界もあるのですが、実は少量だけ使って飲めば、それは決して庶民レベルでも飲めないものではないよ、というのが今回の番組では伝えられなかった部分かなーと思います。
個人的には、この部分を特に補足しておきたいと思います。
今回の番組で、中国茶に興味を持った方がいらっしゃいましたら、以下で簡単に中国茶のことをまとめていますので、ご覧ください。三部作です。
中国茶、楽しい世界ですよ♪
北の中国茶の某有名店で、気がついたら常連の中では長老格になった者ですが、お茶を出すには適した温度があるということです。
一般的には発酵度が低い物は低く、発酵度が高い物は高いが基本で、半分飲んだら湯を継ぎ足すが基本です。
後、数を売ろうとすると、中間マージンが高くないと持ちません。
良心的な料金で売ろうとすると数を売れませんし、そもそも中国の市場が激変期にあるため、良い茶葉の仕入れが難しくなってます。
お化粧して高く売ろうとする、日本では半世紀以上前に通り抜けた道に入り込んでいますから。
コメントありがとうございます。
お名前がないので、どちら様か存じ上げませんが大先輩の方で恐縮です。
今回の番組では温度の話は出なかったですね。
元々、今古茶藉さんが雑味のない、高温で淹れても問題の無いお茶を仕入れるところまでを重視しているということもあります。
また、生活情報番組ではないので、お茶の詳細な淹れ方をレクチャーする番組では無いということだと思います。
実際に説明しようとすると、発酵程度という話だけでは収まりませんので(芽が多いかどうか、粉末がどうか等)。
幸か不幸か、どの産地に行っても出会うのが良心的な茶業さん、茶農家さんばかりですので、あまり悪いイメージは無いですね。