中国料理店で出てくるお茶というと、たとえ高級店に行ったとしても、サービス(無料で付いてくるお茶)の域を出ないものが多い印象があります。
この料理でこのお茶?と思うことも、しばしば。
しかし、そこに一石を投じる試みを銀座の真ん中にある三笠会館の揚州名菜 秦淮春さんでされていると聞き、出かけてきました。
平日限定。中国・台湾茶を楽しむティータイム
銀座の三笠会館といえば、カジュアルなランチもありますが、やはり印象としては本格的なディナーレストランが集まっているイメージがあります。
本格派なお店が1つのビルにギュッと凝縮しているという印象ですね。
こちらの4階で中国料理を担う・秦淮春(しんわいしゅん)さんは、揚州料理を看板に掲げるお店です。
江蘇省揚州を中心に発達した料理で、四川料理のように辛かったりすることもなく、上品であっさり目の印象のお料理です。
比較的お手ごろなランチコースなどもあるのですが、今回のお目当ては、こちらのティータイム。
「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」という、平日のティータイム(14時半~17時)限定のティータイムメニューです。
お茶1種と点心師の陸さんの点心が楽しめて、2,700円(税・サ込)というもの。
陸さんの点心に関してはお噂はかねがね・・・的なもので、もうほぼ鉄板だと思うのですが、お茶はどんなだろう?ということで、お茶好きさん3名で伺ってみました。
お茶会グレードのお茶
お茶については、ベーシックなお茶もあるのですが、やはりここはスペシャルなお茶ということで、看板に掲げられている2種のお茶を。
さらに、ちょうどメニューを入れ替えるタイミングに当たったようで、次に出していく予定のお茶も2種見せてもらい、その中から3つを選びました。
現行メニューから、日晒(ひざらし)野生古樹紅茶(冒頭写真手前)と凍頂蜜香炭焙煎紅茶(冒頭写真左奥)。
次回メニューから、台湾の武夷種の白茶(←名前がうろ覚えです。すみません。冒頭写真右奥)。
の3種です。
これらのお茶ですが、台湾出身の茶人・Peruさんが主催する 台湾茶道教室・留白(るはく)さんセレクトのもの。
お茶会などで使われるようなグレードのお茶であり、ふつうのお店に行っても売っていない系のレアなお茶です。
いわゆる茶人のお茶ですね。
この手のお茶は、一定のグレードを超えているのはもちろんなのですが、そこからさらにプラスαのあるお茶です。
限りなく稀少であるとか、語りたくなるような様々なストーリーがあったり、さらには淹れ手の淹れ方によって味がブレる(淹れ手の腕前が試される)というような傾向があります。
そんなことから、普通のお店には並ばないのです。まさに一期一会なお茶。
たとえば、私が注文したのは、こちらの日晒野生古樹紅茶。
雲南の紅茶です。樹齢500年ほどの古樹だとか。
日晒紅茶(晒紅)というのは乾燥工程で乾燥機を使わず、天日干しで乾燥させるものです。最近、雲南で流行中です。
紅茶は、発酵工程完了後、乾燥する際の熱でもって酸化酵素が失活する(乾燥が殺青的な役目を果たす)のですが、これはその工程が天日干しです。
そうなると葉温が酵素を殺すほどの高温にならないため、酵素が残存し、プーアル茶のような後熟も期待できる・・・という触れ込みのお茶です。
・・・と、簡単に書いただけでも、これだけ語れることがあるお茶なんで、お茶会にはうってつけです。話題には事欠かないのです。
他の2つのお茶も、いろいろな話題に事欠かないお茶なので、そのへんはぜひお店でのお楽しみということで。
こちらでは、スタッフの方が左の蓋碗を使って淹れてくれ、右の茶杯(というより、こちらも蓋碗)にたっぷりと注いでくれます。
これを4煎楽しむことが出来るというものです。淹れなくて良いので、あまり中国茶を飲み慣れていない方でも安心。
味わいについては、1煎目はやや薄いかな?という印象だったのですが、古樹茶らしく2煎目、3煎目と味と香りがどんどん乗ってきて、余韻と甘みがたなびく、とても良いお茶でした(^^)
古樹独特の身体に響くような余韻もあり、4煎で打ち止めにするのが勿体無いぐらいでした。
完成度の高い点心
お茶に合わせて、季節の点心が1つ付いてきます。
今回はこちら。
写真で伝わるかどうか分かりませんが、薄い層が幾重にも重なっていて、とても繊細な仕事がされたものです。
しかも、パリパリ、サクサクに仕上がっていて、食感最高。中に入っている餡も、お茶に合わせてか控え目かつ上品な甘さ。
手作業で、どうしてこんな繊細なものができるのか?と、ただただ感心するばかり。今までのベストオブ点心かも。
噂に違わぬ、陸さんの点心でした(^^)
お茶会だと、席主さんのトークなどもあるので、お茶とお菓子一品で満足な感じですが、お茶を飲みながら1時間ぐらい、おしゃべりしたり・・・という感じになると、もう1品ぐらい点心かデザートを追加しても良いかな、と思いました。
当日はメニューをよく見てなかったんですが、別枠で追加注文もできるみたいなので、「このお茶は長く飲みたいお茶!」と思ったら、追加オーダーしちゃうと、より口福な時間になるかもです。
お茶好きな料理長さんの存在
と、なかなか今までのレストランにはない試みをされているのですが、その理由は料理長さんの存在にあると思います。
こちらの外崎料理長は、日本人で初めての淮揚菜烹飪大師に選ばれているぐらい凄い方なのですが、実はお茶好きさんでもあります。
先に出て来た留白さんでお茶を学んでいるので、お茶会でお茶を淹れたりもされているんですね。
という、お茶好きさん目線にある方なので、お茶もお酒のように十分に楽しめるものであるということを、広く知っていただきたい!という想いから、今回のティータイムコースを始められたそうです。
実際、こうした上質なお茶を飲んでいただくと、お茶に関心を持っていただける方も出てくるそうで、やはり「百聞は一飲に如かず」なのだな、と思います。
お店の入口のところには、少しだけ販売用の茶器や茶葉も置いてあり、興味を持った方が続けられる工夫も。
こうした、きちんとしたお店が、きちんとしたお茶をきちんと提供するというのは、お茶のファンを広げて行くという面でも、とても意義のあることだと思いました。
銀座でいつもとちょっと違う、ゆったりしたティータイムを、と考えている方には、なかなか悪くないセレクトだと思います。
留白さんとのコラボ茶会なども開催しているようなので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
揚州名菜 秦淮春
住所:東京都中央区銀座5-5-17 三笠会館本店 4F
電話:03-3289-5665
営業:月~金:11:30~23:00(LO 22:00)
土・日・祝:11:00~22:30(LO 21:30) ※ティータイムは平日14:30~17:00限定
定休:1月1日
Webサイト
面白い試みです(^^)
この記事へのコメントはありません。