お茶

台湾のお茶ガイド(4)木柵鉄観音

第4弾は、木柵鉄観音です。

台北市内で作られている名茶

木柵鉄観音(もくさくてっかんのん)は、昔ながらの製法を今に引き継ぐ、クラシックなお茶です。
お茶の葉っぱは、小さくコロンと丸まった形。
焙煎に特徴のあるお茶のため、少し黒っぽい色をしています。

水色は発酵や焙煎の度合いによって異なりますが、概ね橙~赤系統の色で、あんずのような色と表現されることもあります。
香りと味は品種・発酵・焙煎の具合によって多彩です。
軽やかでフルーティーな印象のあるものから、ドッシリとした重厚な香り・味わいのお茶まで。
一般的には、年輩の方に好まれるというイメージのお茶なのですが、香りが華やかなタイプもあり、女性のファンも。
製茶や焙煎などで非常に手がかかるお茶ということもあって、木柵鉄観音は作り手の技術と個性が大いに反映されるお茶だと思います。

産地は台北市内。文山区の木柵地区で生産されています。
生産の中心になっている猫空(マオコン)は、夜には台北市内の夜景が見えるなど、大都市にとても近い立地の茶産地です。

大都市に近いことはメリットもありますが、デメリットもあります。
規模的に拡大が難しいため、多くの茶園の経営規模は小さく、量産によるコスト競争力は十分ではありません。
また、茶業自体の先行き不安から、後継者難に陥り、廃業する茶園も多くあります。

このような背景もあって、猫空の茶農家さんは多角的な経営を行っています。
今ふうに言えば、”六次産業化”(1次:農業+2次:茶の製造業+3次:サービス業を足したもの)で、猫空には、茶農家が軒先を貸すように開いている茶藝館や、景色を楽しめるレストランなどが立ち並んでいます。

 

安渓からの伝統を守りつつも変化が

”鉄観音”という名の付くお茶には、大陸にも”安渓鉄観音(あんけいてっかんのん)”というお茶があります。
木柵鉄観音と安渓鉄観音は、ルーツは同じ。
安渓から製法と茶樹を台湾に導入し、以来ずっと作られてきたお茶です。

大陸の安渓鉄観音は、近年の主流は、”発酵軽め。焙煎はごく軽いか全く行わない”という、茶葉も水色も緑色をした清らかタイプに変わっています。
しかし、木柵鉄観音は、伝わったときの伝統を比較的良く守っており、今でも発酵やや重めで、焙煎の強い、昔ながらのお茶の姿を保っています。

とはいえ、そんな木柵鉄観音にも、だいぶ変化の波は押し寄せています。

”鉄観音”という名前は、品種の名前でもあり、製法の名前でもあります。
近年では、木柵鉄観音に用いられる品種は、鉄観音品種だけでなく、より生産性の高い、金萱(きんせん)種や地元・木柵生まれの四季春種などからも作られるようになってきています。
鉄観音製法で作られていれば、木柵鉄観音というわけです。

製法は同じでも、品種が違えば、やはり味や香りは違うもの。
伝統的な鉄観音を求める方は、品種も製法も”鉄観音”であることを求めます。
そのため、鉄観音品種を用いた鉄観音茶は、正欉(せいそう)鉄観音として、特に区別されます。

また、先に挙げたように、茶園の廃業なども相次ぐ中で、木柵だけでは十分な生葉を確保することが難しくなっています。
そこで、より生育環境が良い、阿里山などの高山地域で鉄観音品種を栽培し、それを木柵の技術で焙煎をするスタイルの鉄観音茶も出てくるようになりました。

このように複雑な絡み合い方をしているのが、現在の木柵鉄観音の現状であり、良質の鉄観音茶を確保するのは、なかなか難しい、とベテランの茶商も話すほどです。
そんなお茶ですので、木柵鉄観音に特別な思い入れを持っているお茶屋さん等で購入するのが良いと思います。

 

クオリティーシーズン

木柵鉄観音のクオリティーシーズンは、コンテストも開かれる春と冬の2回です。
春のコンテスト受賞茶は6月初めに発表、冬のコンテストは12月半ばに発表されます。

ただ、飲み頃は必ずしも新茶の時期ではありません。
木柵鉄観音は焙煎を強めにかけているため、火の香りがある程度落ち着いてからの方が、お茶本来の香りや味わいをよりハッキリと感じられるお茶です。
新茶かどうかよりも好みのタイプかどうかの方が、より重要なお茶だと思います。

 

オススメの淹れ方

木柵鉄観音は、発酵と火入れが強めなので、あまりに強く茶葉に湯を当てたり、長めに漬け置きすぎると、渋みや苦みの方が際立つことがあります。
しかし、あまりにも抽出時間が短いと、なかなかお茶の本質の味が出て来ません。
基本的には、熱湯でしっかりと予熱した茶器に、高温のお湯でサラッと。その後、若干湯温を落として、少し長めにじっくりと、がなかなか美味しいと思います。

香り優先なら蓋碗も良いと思いますが、じっくりと茶壺で淹れるのも魅力的です。
茶壺で淹れた方が、味わいに丸みが出るような気がします。

 

続く。

 

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