台湾旅行

台湾あちこち茶館めぐり2016(18)東方美人の茶農家さんへ

厳しかった2016年の東方美人

お昼も食べたので、北埔を後にして茶農家さんへ。
茶農家さんでは、今古茶藉の簡さんとSさんと合流。
Sさんは、茶農家さんに滞在し、お茶づくりの手伝いをしているそうです。
すっかり現地化しており、もはや従業員のように、どこに茶碗や道具があるかを全て把握している状態でしたw

まずは、ちょろっと萎凋中の茶葉を観察。

うーむ、ウンカに咬まれた芽が少ない・・・(-_-;)

2016年の初夏は、東方美人の生産にとって、かなり厳しい環境でした。
簡さんやSさん、茶農家さんの話などを総合すると、茶摘みの前の天候が、あまりにもウンカには厳しすぎたようです。

私が到着した前後には、集中豪雨で桃園空港の建物の一部が水没するという事件がありました。

シトシト雨ぐらいなら大歓迎ですが、集中豪雨では、小さな身体のウンカは流されかねないので、とても活動できません。

さらに、その後は異常な暑さ。
風が吹くと、ドライヤーのような熱風が吹いてくる状態だったので、これまたウンカにとっては厳しすぎる環境。
水ぜめの後に、火あぶりの刑に処されたようなものです。

そんなこんなで、ウンカが十分、活動ができぬまま、茶摘みの適期を迎えてしまいました。
このピークの時期(芒種の前)に、ほとんど噛まれていない生葉ばかりが収穫される事態になったため、良品は大減産に。

こうした天候は、東方美人の主要な生産地である、いわゆる桃竹苗(桃園・新竹・苗栗)に共通したものだったようです。
あとで複数の方に聞いても、口を揃えて「厳しかった」と(もっとも、良いのもちゃんとあるんですけどね。後述)。

というわけで、テイスティングしてみます。

全般的に良い線まで揃えていて、技術で相当程度のカバーをしていることは分かりました。さすがです。

ただ、やはり最後の一押しの蜜香がありません。
発酵で作った香りと白毫の香りは十分出ているのですが、蜜香ばかりは如何ともしがたい。

たくさんテイスティングした中で、良いのが2つだけありました。
きちんと蜜香が出ている、まさに東方美人!というやつです。

が、これは実は既に売約済みでした。

押さえていたのは、なんと簡さん。
1週間前ぐらいから何回か茶農家さんに足を運び、厳しくなりそうという感覚を得て、早めに良いものを押さえたそうです。
この読みとフットワークは、さすが専業。

ここまでやらないと、厳しいシーズンの仕入れでは良品を確保できないということです。
茶農家まで行ってコンスタントに安定した仕入れをしてくるバイヤーさんというのは、こういう努力をしているわけです(なかなか、その苦労は見えないですけれど)。
”はずれ年”と言われてしまいそうなときに良いお茶を仕入れてくる人は、運だけではないですね。
プロフェッショナルな”仕事”が必要です。

 

お茶づくりを見学

こちらの茶農家さんには2009年から毎年欠かさず、芒種の前後にお邪魔しています。
なので、作り方などはいつも見ているのですが、新ブログにした記念として、発酵過程だけを少しご紹介。

まずは最初の写真にあった日光萎凋をします。
ある程度時間が経ってくると、お茶から水分が抜けて萎れ、色が変わってきます。

このようになってきたら、萎凋を止めて、做青の作業に入ります。
最初はやさしく揺する程度。数回で終わりです。
で、揺すった茶葉を、もう一度ザルに広げて、置きます(静置)。

揺すって色を変えるというよりは、静置している間に発酵が進んでいくという感じです。
これを何回か繰り返し、ラストのタイミングでは大浪という、かなり力を入れて長時間かけた揺青作業を行います。

私もお手伝いしましたが、30分やったら腰が痛くなりました(^^;;

で、それをしばらく置いて発酵を進めると、こんな感じの色になります。

程良い感じになったら、ここで殺青機にかけて殺青し、そして悶熱という東方美人ならではの特殊な工程を経ます。
そして、揉捻。最後に乾燥をして、製品になります。

生葉が到着してから、だいたい24時間はかかります。
重発酵のお茶なので、かなり大変です。

ここの茶農家さんは、ほとんどの工程を手作業でやります。製茶シーズンはいつも寝不足気味のようです。

東方美人は、茶摘みする茶葉のサイズが高山茶などよりも遙かに小さいので、摘み手のコストが嵩みます。また、製茶に時間がかかるぶん、製茶コストも高くなります。
さらにはウンカの有無など気象条件にも左右されるので、かなり仕入れは難しいお茶だと思います。
現場を知ってしまうと、なおさらです。

今回は結局、蜜香はほとんど感じないものの、きちんと発酵させたお茶を購入しました。
この茶農家さんの特色である香りの良さと白毫の香りは十分ありましたので。
素材をある程度諦めて、茶農家さんの技術を購入した、という感じです。

ただ、お値段は例年よりも、かなり上がっていました。
良品が少ないと、どうしてもこうなっちゃいますね。
例年より、購入量は少なくならざるを得ませんでした。

茶農家さんも、申し訳ないと思っていたようで、昨年の冬の品評会受賞茶を振る舞ってもらいました。
頭等(三)だそうです。特等、頭等(一)、頭等(二)と来ますから、昨年のNo.4ですね。

茶殻がとにかく繊細。高級緑茶ですか?と思うぐらいの小さな芽です。
これで烏龍茶を作るとは・・・
この茶摘みコストだけでも大変なものだろうな、と。

そして、香りは本当に香水を溶いたようなもので揮発成分がとても多いです。
茶水は口当たりが柔らかく、サラッとしていますが、香りの成分の密度がギュッと詰まっているようで、飲んで喉に落ちてから香りが戻ってきて爆発する感じ。甘みはべたっとしたものでは無いのですが、かなり強めに出てきて、まさに甘露。
飲んだ後の余韻もずーっと残るので、しばらく何も飲みたくないぐらいです。水を飲んでも甘く感じたでしょうね。

買うこともできたのですが、150gで数万元のお値段だそうで・・・
んー、この美人さんは、高嶺の花でしたw(高値?)

でも、こういう世界があるのを知れただけでも良しとしましょう。
村のカラオケ大会みたいな小規模コンテストではなく、名産地の激戦のコンテストを勝ち抜いた上位のお茶ってのは、本当に凄いのです(好みはあると思いますけど)。

 

茶園を見学

作業が一段落したということで、恒例の茶園巡りに。
茶園を見回るのもお仕事のうちなので、それに便乗、という形ですが。

こちらが茶畑。植えている品種は青心大冇。
こんな葉っぱです。東方美人の場合は一芯二葉で摘みます。

青心大冇という品種の読み方ですが、「ちんしんたーもー」というのが正しい読み方のようです。
よく聞かれる「ちんしんたーぱん」というものですが、「ぱん」というのは台湾語読みなので、これだと中国語と台湾語のちゃんぽんだ、とのこと。
ちなみに、この「冇」の文字を説明するときは、台湾の人も「有の棒が二本無いやつ」と表現します。

茶摘みをしている場面にも出会ってみたり。

さらに2012年に造成から始めた茶畑も見学。

ここ、私も造成工事をやっているところから見ています。
そんなわけで、個人的にちょっと思い入れもある畑です。
茶農家さんも、「ここを作るとき見せたよな」と。
毎年通うということは、こうして歴史を共有するということでもあります。

こちらの茶園は畝の間に雑草が生えています。
暑いときは、そこにウンカが避難したりもできるので、プラスに作用するそうで。
蜜香がある!と思ったお茶は、ここの茶園のお茶だったらしいです。
茶園づくりが上手く行っているところは、多少の気候変動にも耐えうるわけですね。

ただ、なにしろ、まだまだ4年目で摘み始めたばかりの茶園です。
収量が増えるのはもう少し先ですが、何とかここのお茶を買いたいところです。

おそらくこの茶農家さんのエース級の畑になると思うのですが。

茶園では、基本的にはウンカ撮影タイムに充てています。

でも、何年やっても、なかなか上手く撮れないんですよね・・・
来年もまた再挑戦したいと思います。

 

数年通えば、人も成長

工場に戻る途中、峨眉にある客家の伝統的なお菓子のお店に案内してもらったり。

豬油餅という、客家の伝統菓子だそうです。
大きなホール状のものと、小さい月餅ぐらいのサイズのものがあり、月餅サイズをいくつか購入しました。
餡がギッシリ詰まって、表面にはゴマが振りかけられており、香ばしくてなかなか美味しいお菓子です。

 

最後に、夕食をご馳走になって。

夕食を食べているぐらいなので、既に台湾好行バスは終わっており。
竹東のバス停まで、車で送ってもらうことにしました。

送ってくれたのは、茶農家さんの息子さん。
初めて来た頃は、確か中学生?で、パソコンのネットゲームをやっていた記憶が。

それが今やすっかりイケメンの茶農家後継者となり、中国向けの営業などもやっているそうです。
今後は彼が名人の系譜を引き継いでいくことになりそうです。
やっぱり通い続けることは、歴史を共有することだなー、と思います。

竹東から、最終の台北行のバスに乗り、台北着は夜の11時頃に。
とても長い一日になりました。

 

続く。

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